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評価:
三津田 信三
講談社
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出版社で編集の仕事をする傍ら
『迷宮草子』という名の同人誌から小説を依頼された私は
気になっていた洋館に移り住み
そこをモチーフとした怪奇小説の連載を開始した。
ハーフ・ティンバー様式のその家はイギリスから移築されたものであり、
イギリスで3件、日本で1件の殺人事件の舞台でもあった。
無意識の内に筆が進み始まった連載小説は
洋館に引っ越してきた家族の弟が
その家に興味を持つ青年津口十六人を不気味に思いながら展開していく。
現実世界では私は連載のファンであるという信濃目綾子と親交を深めていく。
連載小説と現実の事件が奇妙にリンクし、
絡まりあった物語が行き着く先は。
カバー装画:村田修 カバーデザイン:坂野公一(welle design)
謂れのある洋館に住む作家が
自分でも書いた記憶のない小説を発表し、
その小説の中身が作家が知らなかった実在の事件と酷似している。
さらに彼自身にも不気味な影が忍び寄る。
本格ミステリ大賞を受賞されたということで
デビュー作を読んでみました。
好みというわけではないのですがとても気になる作品。
現実世界との合わさり方が巧みでざらざらした感触がする。
作中の三津田信三も著者と同じ仕事を手がけていて
現実との境界が曖昧なのもこの不穏な雰囲気に拍車をかけています。
本当の現実と、物語の中の現実と、作中作が溶け合っている。