ほんのひとこと

元・本屋でバイトする学生による
日々の読書記録です。
<< September 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
# スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | | category: - |
# つむじ風食堂の夜
十字路の角にぽつんと立つ名無しの食堂は
いつしかつむじ風食堂と呼ばれるようになった。
雨の研究のかたわら食べるために物書きをする私は
月舟アパートメントの幻の七階に引っ越してきてから
夜はこの食堂に通い詰めている。
果物屋の青年や二重空間移動装置を売りつける帽子屋、
劇団で看板女優を目指すサエコさんたちと交流しながら
手品師だった父のことを思い出す。
装丁:吉田篤弘・吉田浩美

雰囲気小説です。必ずしも食堂が舞台ではありません。
ストーリーとして大きな見せ場はないけれど
読んでいると不思議な懐かしさを憶える。
タブラさんの操るエスプレッソ・マシーン、
月の光に照らされた階段上のオレンジ、
古本屋で見つけた「唐辛子千夜一夜奇譚」、
そして壁に留めてあった父の形見である袖口。
こうした小物の使い方が本当に上手いんだよなあ。

| comments(0) | trackbacks(0) | 00:09 | category: ヤ行(吉田篤弘) |
# ないもの、あります
評価:
クラフト・エヴィング商會
筑摩書房

堪忍袋の緒、舌鼓、左うちわ、相槌、口車、先輩風、
地獄耳、一本槍、自分を上げる棚、針千本、思う壺、
捕らぬ狸の皮ジャンパー、語り草、鬼に金棒、助け舟、
無鉄砲、転ばぬ先の杖、金字塔、目から落ちたうろこ、
おかんむり、一筋縄、冥土の土産、大風呂敷。
イラスト付きのないものカタログです。
装丁・レイアウト:吉田篤弘・吉田浩美 写真:坂本真典

洋食向けに西洋鼓笛隊の少年仕様の「舌鼓」、
左手で仰ぎ続けなければならない「左うちわ」、
ここ一番という場面でしゅっと吹かせる「先輩風」、
何も聞かずに自分について耳を傾ける「地獄耳」、
自分が死んだ後にひっそりと小さな花を咲かせる「語り草」、
うまく畳むことが重要な「大風呂敷」。
慣用句でしか聞かない現実には「ないもの」を
皮肉とユーモアを交えて紹介しています。
ドラえもんの秘密道具みたいでパラパラ読んで
楽しめる本です。飾り過ぎない装丁も好き。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:36 | category: ヤ行(吉田篤弘) |
# 圏外へ
評価:
吉田 篤弘
小学館

新しい小説に取り掛かった私。
私が小説に没頭しすぎていることを不安がる娘の音。
自称学者で将棋相手である円田君。
南を夢見るドクター。
雲呑を食べに行ったり小説と格闘しているうちに
いつしか現実と小説の境目があやふやになっていく。
世界中のカタリテが集まる<エッジ>で私は
物語から去っていったものたちと邂逅する。
装丁:吉田浩美・吉田篤弘[クラフト・エヴィング商會]
カバー写真:Getty Images

語るものと語られるものとの関係を表した実験的な小説。
ストーリーを説明するのが難しいのだけれど
いしいしんじのような雰囲気があります。ソボフルのあたりとか。
引用したい言葉がたくさんあったので以下。

「およそ物語というものは何かがズレるところから生まれます。」
「つまり、スラスラと書けないものこそ書くべきなんです。僕はそう思います。スラスラ書けるようなものになんか僕は少なくとも興味を持てない。もちろんネチネチ書くのも駄目です。そういう意味ではコレはスラスラとネチネチの二者択一ではなく、もうひとつの道と言えばいいんでしょうか」
「アナタがそんなふうにグズグズしているうちに、アナタが書くよりも早く物語のほうが、これでよろしかったでしょうかと飛んで行きます」
「この部屋にとっては、こういったものが全部ノイズなんだよ。土星の環だ。つまり『詩』だよ。(中略)で、僕が気になるのは、デジタルで作られたものは、どうもそういったものを拾い上げない傾向にあるということ。」
「なにしろ、カタリテなんぞこの世にはゴマンといるのだから、うっかりしていると、どこのドナタか見知らぬ語り手にコチラが語られてしまうことになる。」
「「圏外」というその二文字の警告が、私が求めていたココでありながらココではないところを示していた。おそらく、私はこの「圏外」にいる限り、私にとっての安全圏にいると考えていい。世間にも世俗にも世界にも追われることなく、しかし、それでいながら、しっかりこの世の地図上の現実に立っている。」
「少しでも波打ち際を擁する以上、その国の輪郭線は著しく正確さを欠く。そこにはそもそもホンライというものがない。でなければ、正確さを欠いた状態がホンライの姿になる。」
「人は「過去」と「未来」の双方から操られているわけだ。板挟みというヤツ。」
「僕はもうここまで書いてしまった。書いて書いて語りつづけた者は、終わりであるとか最後といったものに辿り着くまで前進を試みなくてはならない。たとえ、その途上において、自分に最もふさわしい居場所を見つけたとしても。」

| comments(0) | trackbacks(0) | 23:23 | category: ヤ行(吉田篤弘) |
# 78

幼なじみのハイザラとバンシャクの子供時代から
レコード店に足しげく通うようになり
お隣の看板娘であるカナさんに恋をするまでのストーリーに加え
同じ人間関係を作っていた伝説のバンド
「ローリング・シェイキング&ジングル」の話、
レコード店の店主や古本屋の話など
78回転レコードをめぐる短編集。

レビュー前に返却してしまった本その2。
1つの人間模様とレコードをベースに様々な所へ飛んでいきます。
いつの時代も勝者は靴屋。夜の塔が素敵でした。
吉田さんの本はわくわくする小道具が多い。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:17 | category: ヤ行(吉田篤弘) |
# それからはスープのことばかり考えて暮らした
失業した僕は教会の隣にあるアパートに引越し
隣駅の映画館に松原あおいを見たり
サンドイッチ屋さんのトロワに通ったりと
だらだらと過ごしていた。
トロワの安藤さんに誘われてそこで働くことになった僕は
駅前のコーヒー屋が始めたサンドイッチに勝つために
スープの研究をはじめることにした。
そこそこおいしいスープは作れるが模索を続ける中
映画館でよく会う緑色の帽子を被った初老の女性から
特別なスープのレシピを教えてもらうこととなった。
イラスト:佃二葉 装丁:吉田浩美・吉田篤弘
題字:二井康雄

「禁断のパンダ」はこってりしたフランス料理が食べたくなるけど
この本は温かくてとろとろのスープが飲みたくなります。
冬場に読むともっとよかっただろうな。

大事件は起こらないけれど
登場人物の人のよさがにじみでてくるいい本です。
とにかく、おいしい!
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:49 | category: ヤ行(吉田篤弘) |
Categories
Profile
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Search this site
Sponsored Links