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伏せっているところにやってきた叔母のロッカさんに
やりたいことや、楽しそうなこと、ほしいものを書いた
ドリフターズ・リストを作るように薦められる。
勢いで実家を出て、幼なじみの京ちゃんに髪を切ってもらい、
お鍋を買い、高級エステに行き、同僚の郁ちゃんの豆を食べ、
どんどんリストを消していくが、このリストを達成することで
私は成長できるのだと思っていたのに
譲さんは帰ってこないし周りからは置いていかれている感じ。
私にとっての豆はなんなのだろう。
装画:西川真以子 装丁:池田進吾(67)
式場まで予約した婚約者からふられてどん底にいる主人公に
ニューハーフの幼なじみや破天荒な叔母、
豆を食糧危機に結びつける同僚、
フリーターだがソムリエを目指し始めた兄が救いの手をのばす。
毎日の積み重ねの大切さを丁寧に説いていく話です。
「私は何をしているのか、何をすればいいのか。やろうとしていることは何か、やりたいことは難なのか。どういう毎日にしたいのか、どんな人間になろうとしているのか。そういうことを考えるのがリストの役割だったんだと思う。」
「私が選ぶもので私はつくられる。好んで選んだものも、ちょっと無理をして選んだものも、選ぼうとしなくても無意識のうちに選び取っていたものも。譲さんを選んだのも、そして譲さんに選ばれなかったのも、私だ。私に起こった出来事だ。それらは私の一部になる。私の身体の、私の心の、私の人生の。」
音大付属高校の受験に失敗して流されるままに高校生活を送っていた。
しかし数多くあるイベントのひとつにすぎない合唱コンクールで
指揮者を任されてから歌への思いを忘れられないことに気づき
またひとり熱くなってしまう自分に自己嫌悪を抱いていた。
コンクールはひどい出来栄えだったが音楽の先生の一言で
もう一度卒業式に向けて合唱に挑戦することになる。
玲の母に憧れるうどん屋の娘の千夏、
肩を壊してソフトを辞め余生を送っていた早希、
霊感があり歴史のない学校を選んだ史香、
核シェルターに案内されて彼と別れた佳子、
美しい姉にコンプレックスを持つ全てがそこそこのひかり、
他人を羨み自分に悲観する少女たちが奏でる歌の連作短編集。
ブックデザイン:鈴木正道(Suzuki Design)
イラストレーション:山下以登
出来たばかりのあまり特色のない高校に集まってきた女子たちには
それぞれ理由があった。
音大付属受験に失敗したから、
うどん屋をしている家からは遠く奨学金があったから、
ソフトが出来なければどこでもよかったから、
古くからいる幽霊を見たくなかったから、
第一志望の学校に落ちたから。
バラバラの気持ちでただ周りの流れに身を任せていればいい、
そう考えている少女たちが合唱を通して少しだけ
お互いのことを知ろうとする姿勢の自然さが好きです。
だから霊感少女だけ少しエピソードとして浮いている気がしてしまう。
全ての章のタイトルにハイロウズの曲のタイトルが使われています。
宮下さんがリスペクトしているらしい。
骨董屋の長女として育った私はどうしようもなくなってしまうほど
人やものを愛することができなかった。
陶片を放さなかった妹の七葉。中原くんを好きでくねくねしている真由。
高校の合格発表の帰りに従兄の愼ちゃんの家から帰らなかった七葉。
大好きな靴を持ち逃げした就職先の靴屋の店員。
私がわかるのは靴の値段ばかり。
心の底から何かを愛したり欲したりすることができないまま
貿易会社の買い付けについて行き
先輩社員の茅野さんから愛しても自由でいていいのだと諭される。
イラストレーション:日端奈奈子 ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
家庭、中高、大学、そして会社の4つのスコーレを通じて
愛することの意味を知っていく麻子の物語です。
あらすじだけを語ってしまうとあっさりしているのですが
読んでみるととても丁寧に人の気持ちに寄り添っているので
共感しやすいと思います。特に女子は。
なりふり構わなくなるのも愛だけれど
じっくりと考えつくすことだって愛。
跡継ぎのいないまま農業を続けて倒れたじいちゃんが聞いた
「アンデスの声」
恋人にふられたところにかかってきた電話で波照間島へ飛ぶ
「転がる小石」
恋人が旅人となり、息子もまた旅に出てしまう
「どこにでも猫がいる」
出張で来た田舎で小学校の転校生と今の恋人を思い出す
「秋の転校生」
今日もナースコールで呼ばれ、隣の患者への愚痴を聞かされる
「うなぎを追いかけた男」
むずむずを治すために会社で聞いた医者に会いに台湾まで行く
「部屋から始まった」
大学時代からのしっかりした級長がこの旅でぼんやりしている
「初めての雪」
家庭教師先の女の子から聞いた噂の正体を知りたくなる
「足の速いおじさん」
箱入り娘だった彼女が料理研究家になったきっかけ
「クックブックの五日間」
先輩社員としてつんつんしてしまう自分と紅茶の関係
「ミルクティー」
又従姉の結婚式のために田舎に帰るとお使いを頼まれる
「白い足袋」
退院した老人が同室だった男の四十九日帰りに病院に立ち寄る
「夕焼けの犬」
装画:網中いづる 装丁:新潮社装丁室
台湾や病院、方言によって薄くつながっている短編集。
どの話も何かが解決して終わるのではなく、
その先に何が待ち受けているのか知りたくなる終わり方です。
「どこにでも猫がいる」は時間を錯覚しそうで面白い。