ほんのひとこと

元・本屋でバイトする学生による
日々の読書記録です。
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# 言い寄る
ハイミスでデザイナーの乃理子は学生時代からの知り合いの五郎のことが
好きでたまらないのだが、聖人のような五郎には
まったくその気がないようなのでなかなか気持ちを伝えられないでいる。
ある日OL時代の友達の美々から隆之から別れを切り出されたので
慰謝料を取り立てたいと相談を受け、妊娠したと嘘をつくことを勧めた。
取り立ての場に立ち会うと、隆之の方はボンボンの剛を連れてきていた。
乃理子と性格が似ている剛はためらいもなく乃理子を別荘へ誘い
そのわかりやすいアピールに好感を持つが、
明くる朝目覚めると剛の姿はそこにはなかった。
何か知っていないかと隣の別荘にいた水野に尋ねると
剛なら他の女の元へ行っていると言われ
呆れた乃理子は水野の別荘で過ごすことにする。
純粋な五郎、気の合う剛、紳士の水野、
3人の間をふらふらしていた乃理子だったが
美々が本当に妊娠していることが発覚し、
シングルマザーは嫌なので出産時だけ戸籍を貸してほしいと頼むと
五郎があっさりとOKを出したことに衝撃を受ける。
装丁:大久保伸子 ハンカチ:「懐かしいハンカチ」文化出版局

初出が昭和48年とは思えない瑞々しさです。
企業コンサルタントなんて言葉もさらっと出てくるし。

昔からの知り合いでずっと密かに片想いをしている五郎、
金持ちで派手好き遊び好きだがわかりやすくて気の合う剛、
10歳くらい年上で自分を丁寧に扱ってくれる水野、
彼らの間をふらふらしているデザイナーの乃理子の話です。
3部作の第1部は剛と水野との出会い、
そしてあれだけ誘ってもなびかなかった五郎が
自由奔放な美々に対して心を開いてしまうことへのやるせなさ。

もっと強引にでも五郎を捕まえておけばいいのに!と思ってしまいます。
もったいない。乃理子の友達になったような視点で読んでしまう。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:21 | category: タ行(その他) |
# 僕らが旅にでる理由
歯科医の娘で歯学部に通い勉強のストレスを
平日毎日違う男の子と寝ることで発散していたわたしは
診察に来たラーさんに誘われてこっそり旅に出ることにした。
ラーさんが失ってしまった何かを探す旅はあてどない。
最初に訪れた籠原でわたしは3日でぶくぶくと太り
群馬の元競馬場で歌の練習をするおばあさんに愛の物語を聞く。
次に訪れた長野はラーさんの会社のマシマロ工場へ行き
おばあさんとなったわたしはパルコと知り合う。
そしてわたしは9歳になりパルコの車のミラ子で旅を続ける。
パルコはラーさんに人生初めての告白をするが伝わらない。
それでもファミリーとなったわたしたちは家を借り
とりあえずは落ち着いたかと思いきや
ラーさんは家の近くの森へと一人で旅を再開してしまった。
きっと瀧の方にいると踏んだわたしはラーさんを追いかけながら
堕胎してしまった誰かの子どものことを思う。
装画:山田緑 装丁:大久保明子

歯科医の娘の衿子と患者のラーさん、
そして元ヤンのパルコの3人の奇妙な旅路の物語。
太ったりおばあさんになったり9歳に戻ったりと
様々な自分を体験した(気持ちになった)衿子が
人生にやりなおせないことなどないのだと知る。

ラーさんの失くし物は途中で察しがついたのだけれど
それがちゃんと台詞にまで反映されていることには
後の方まで気が付きませんでした。
「や、せ、な」は本当は何て言いたかったのだろう。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:47 | category: タ行(その他) |
# おとぎのかけら
迷子になったことがばれたらお母さんにぶたれるから
そのままお兄ちゃんと一緒にこっそり家を出ていくことにした。
「迷子のきまり ヘンゼルとグレーテル」
会社をずる休みした僕が再会した小学校でいじめられていた翔也は
周りと違うことを恐れていた当時を馬鹿らしいと笑った。
「鵺の森 みにくいアヒルの子」
事務員として美大に残ったわたしは叔父の奥様である美智子先生が
表面的な美ばかり求めていることがおかしくてたまりません。
「カドミウム・レッド 白雪姫」
資産家の息子であり人生を退屈に思っている僕は
幼い頃細い指輪を残して去った少女を探しながら
伯母のヘルパーに来ている豪快な女性に惹かれていた。
「金の指輪 シンデレラ」
まだ成熟していない少女の客になった私は
彼女が買われている姿を覗くことに興奮を覚えるようになる。
「凍りついた眼 マッチ売りの少女」
同棲中の彼女がもらってきた梅の盆栽に虫がついたことをきっかけに
気になっていたカフェの女に手を出し虫よけの鈴を借りた。
「白梅虫 ハーメルンの笛吹き男」
認知症となったさやちゃんの眠りは
私が奥田さんからのメールを待つ眠りより覚悟が大きい。
「アマリリス いばら姫」
装丁:松田行正+日向麻梨子

西洋の童話をモチーフとした美しくぞっとする短編集です。
虐待、いじめ、少女売春、浮気、不倫、
暗いテーマがどこか残酷な童話の世界と調和しています。
ベースとなった童話がわかりやすいものもあれば
要素だけ採用されて全く別の話になっているものもあってバランスもいい。

「カドミウム・レッド」は美しい自画像を描くことに必死な叔母に対して
もっと極端で純度の高いものこそが美につながるのだとする
わたしの狂気的で静かな語り口が印象的です。

桜庭一樹さんが好きな人はきっと楽しめると思います。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:39 | category: タ行(その他) |
# 竜が最後に帰る場所
元バイト先の高尾さんのガールフレンドであるマミさんから
突然電話がかかってきた。
あまりにしつこいので無視し続けていたが久しぶりに電話に出ると
彼女は自分が人を殺せる瓶を持っていると言う。
「風を放つ」
10歳のときに母が連れてきた宗岡は最低な男だった。
いつモンスター化するかわからない宗岡はついに母を刺して捕まり
私は母方の実家に預けられることとなり、
成長してから宗岡の娘が描いた漫画を読む。
「迷走のオルネラ」
冬の夜に真っ赤なコートのガイドさんの後に着いて行けば
パラレルワールドに行くことが出来る。
辞め時がわからない者、次の町を楽しみにしながら列に加わる者、
失ってしまったものを取り戻そうとする者。
「夜行の冬」
ピアノを買った直後にアサノに声をかけられた私は
「偽装集合体」だと言われ、「拡散」させられてしまう。
鮮やかな鸚鵡となった私たちは南の島へ渡り亡霊のように過ごす。
「鸚鵡幻想曲」
水中で生まれて弱肉強食の世界を生き抜き
陸で生活するようになったゴロンドは<呼び声>を聞いて
シンのもとで同族たちが集まるコロニーに辿りつく。
「ゴロンド」
絵:くまおり純 装丁:斉藤昭(Veia) 山口美幸(Veia)

待ち遠しかった恒川さんの新刊です。
普段は図書館で済ませるのですが久しぶりに購入。
そして買った甲斐がありました。

「風を放つ」は一番現実的な話。
「迷走のオルネラ」は「幻は夜に成長する」に少し似た洗脳系。
「夜行の冬」は南国系の話が多い恒川さんには珍しい冬の物語。
「鸚鵡幻想曲」は本当は違うものが集まってひとつの物になりすますという面白い設定。
「ゴロンド」は竜の生態を描いた童話っぽい作品。

一番好きなのは「鸚鵡幻想曲」です。
「偽装集合体」という設定がつぼすぎる。
宏が「拡散」した時点で終わっても綺麗だと思うのですが
鸚鵡たちが暗躍して人間社会に影響を与える過程も面白かったです。

「夜行の冬」もいい。こういう不思議なルールが決まっている話が好きです。
次の町をどこまで目指すのか。脱落者に対してどう接するか。
人間の欲がさらけ出されていてぞっとします。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:42 | category: タ行(その他) |
# ボルドーの義兄
優奈はレネの紹介で彼女の義理の兄であるモーリスが
ベトナムに行っている間の2ヶ月間ボルドーの家を借りることにした。
女優を夢見る優奈、仏文学者のレネ、作家のモーリス、
優奈の同僚ナンシーとヴァルター、付き合いの長いリリー、
哲学者のパウルと妻のヒルデ、娘のオリヴィア、
土産屋のカール、詩人のウタ。
それぞれのエピソードが積み重なり交差して
優奈の思考そのもののような断章たち。
装丁:山田拓矢

「あたしの身に起こったことをすべて記録したいの。でもたくさんのことが同時に起こりすぎる。だから文章ではなくて、出来事一つについて漢字を一つ書くことにしたの。一つの漢字をトキホグスと、一つの長いストーリーになるわけ。」
このコンセプト通り、一つの裏返された漢字とそれに内包されたエピソードが
どんどん並べられて優奈を取り巻く環境を浮き彫りにしていく
不思議な作品です。
友達の義兄と駅で待ち合わせてご飯を食べ、
留守中の彼の家を借りるまでの間にあちこちへと飛ぶ思考。
著者の多和田さんは詩人でもあるので
言葉に対するアンテナがとても敏感な人なんだと思います。

「ひょっとしたら単語というのはどれも楽器なのかもしれない。二つの音からなりたつオトオトには血も親もなかったが、自分の出所について違った形であきらかにすることのできる他の親族と並んで確かにそこにいるのであった。」
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:29 | category: タ行(その他) |
# 海に落とした名前
ベルリンで日本語教師をする日本人マモル、
ニューヨークでドイツ語を教えるドイツ人マンフレッド、
東京で漫画家を目指すアメリカ人マイケルの三角関係。
「時差」
稚内からサハリンへ渡りガガーリン公園を、運動場を、丘を見て
戦争の残滓を見つける
「U.S.+S.R. 極東欧のサウナ」
全てが合理化されて部下とは顔を会わせない女社長の麻美は
家ではみみちゃんを可愛がり老齢の克枝に手を焼いている
「土木計画」
乗っていた飛行機が不時着して私は機内に荷物と記憶を置いてきてしまった。
残されたのはポケットいっぱいのレシートの束だけ。
担当医の甥の後藤とその妹の三河と共に推理を重ねる
「海に落とした名前」
カバー作品:ピピロッティ・リスト 装丁:新潮社装丁室

不思議な短編集です。
どの作品も小説という媒体をうまく活かしています。
ベルリンとニューヨークと東京を舞台とした三角関係を描いた
「時差」は何の前触れもなく語り手がぐるぐる交替して面白い。
「U.S.+S.R. 極東欧のサウナ」は小説ならではの場面の切り替えを、
「土木計画」は叙述トリック(推理小説ではない)を、
「海に落とした名前」は記憶をなくした主人公と自問自答とトリップを
これしかないという文章で著しています。
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:57 | category: タ行(その他) |
# うたかた
映画目当てで行った地元の代議士の後援会で能理子と出会った俺は
周りの悪い仲間にはない清楚な美しさにのめりこんだが
彼女は姿を見せなくなり腑抜けたまま能理子を探し回る「うたかた」
友人の結婚式でタミコは守の友人である
東京から大阪へ赴任してきた岡野と知り合い
彼のさわやかな物腰にひかれていく「大阪の水」
社長に抗議した卯之助を援護したために会社を辞めさせられたわたしは
足がよくないせいで再就職もままならず趣味の絵に没頭しながら
母の集金の仕事で得た収入で細々と食べている「虹」
ドラマ作家の僕が友達の女である百合子にエロ作家の類子と
彼女と同棲している康男を紹介され、
さらに類子から手芸家の紅子と引き合わせられる「突然の到着」
タレントのあたしは俳優の志門と恋人だが彼の酒癖の悪さに辟易して
内緒で大学生の礼二とみき子・八木さんと連れ立って
東南アジアに旅行に来た「私の愛したマリリン・モンロウ」
装画:上楽藍 デザイン:大久保伸子

最近改めて人気が出てきている田辺さんを読んでみる。
想いの大きさが不等号になっている恋愛小説集です。
初出は一番古いもので53年も昔に出たものだけれども色褪せていない。

一番ガーンときたのは「私の愛したマリリン・モンロウ」。
自らのサービス精神のせいで
美青年だけれども気まぐれで酒癖の悪い志門と別れられないのだと
思っていた千果子が彼への想いに気づく所にやられました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:03 | category: タ行(その他) |
# 白雪堂
評価:
瀧羽 麻子
角川書店(角川グループパブリッシング)

化粧水シラツユに憧れて化粧品メーカーに入社したわたしは
先輩の槙さんと一緒にシラツユのキャンペーンチームに配属される。
シラツユの生みの親であるマダムからなかなかOKが出ないが
売上データや消費者アンケートを元に説得を続けて
ついに姉妹品ユキヒメの発売企画を通すことに成功した。
イメージタレントにまだ無名だけれどユキヒメにぴったりの
ミモザを見出し起用を依頼するのだが
大手ライバル会社に持っていかれてしまう。
まさかそこから中途入社してきた同僚の成宮がスパイなのか?
そしてまだ学生である彼氏の直也とも気持ちがすれ違う日々。
カバーイラスト:あずみ虫 カバーデザイン:大武尚貴(角川書店装丁室)

化粧品メーカー新入社員が恋に仕事に奮闘するお仕事小説。
キャリア志向というよりは好きなことを一生懸命やれば
結果もちゃんとついてくる、という読みやすいストーリーです。

ユキヒメのキャンペーン結果まで読みたかったけれど
1年間で話が区切られるし
合併や先輩・同僚の辞職でうやむやになってしまった感じ。
あとなんだか成宮が男のように見えないんだよなあ。
| comments(1) | trackbacks(1) | 14:22 | category: タ行(その他) |
# 南の子供が夜いくところ
評価:
恒川 光太郎
角川書店(角川グループパブリッシング)

借金で一家心中のため海水浴場へ行ったタカシ一家は
ユナの手配でばらばらに南の島に送られる「南の子供が夜いくところ」
果樹の巫女だけが行くことができる聖域を持つ島に
異国の男が流れ着き文明を運んでくる「紫焔樹の島」
小学校の先生が最近作った祠の由来を調べるうちに
墓参りで起きた不思議な出来事を知る「十字路のピンクの廟」
他の島の敵が攻めてきて島は壊滅、シシマデウさんは
大海蛇の一族を探しに海へ漕ぎ出す「雲の眠る海」
岬の崖の中に埋まる部屋で蛸をとって暮らす男は
自分の息子を探してここに住み着いたのだと言う「蛸漁師」
半分植物になった男が海賊であった自分の過去を思い出す
「まどろみのティユルさん」
息子に会いにバスに乗ったはずが
フルーツ頭の暮らす村にたどり着いてしまう「夜の果樹園」
装画:鈴木里江 装丁:鈴木久美(角川書店装丁室)

恒川光太郎の新作です!
今まで日本が舞台の根底にあったのに対して
今回は異国の南の島での物語です。
よりファンタジックでいしいしんじのような雰囲気。
「紫焔樹の島」はワンピースのシャンディアを思い出します。
大航海時代にはよくあったことなのかもしれないけれど。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:00 | category: タ行(その他) |
# ギフト
元刑事、今はビデオ屋でアルバイトをする俺は
死者を見ることができる少年と出会い
強い思いを残したまま旅立てずにいる彼らを手伝うことにした。
交差点で事故に会ったおばあさん、虐待された犬、
庭の池で溺死した女の子、狂言のつもりが本当に死んでしまったOL、
そして俺のせいで死んでしまった少年。
彼らの抱えるものを紐解いていきながら
その能力のせいで両親と上手くいかない少年も
自らの生き方を考えていく。
装画:植田真 装丁:松昭教

作中に映画『シックス・センス』が何度も出てきますが正にそんな感じ。
霊の見える少年と彼を手伝う元刑事の話しです。
様々な霊を送っていきますが美沙が一番インパクトが強かった。
庭の池に落ちてそのまま死を望んだ少女は
自分の地位を最優先にする歯科医の父と
世間体ばかりを気にする母に挟まれて苦悩する
弟の身を案じて死後19年もの間留まっていた。
まだ幼かった彼女が自分よりもはるかに大きくなった
弟を守ろうとする姿に心を打たれます。

誰も悪くないのに様々な偶然が重なってしまって悲劇が起こったとき、
人はどこにその気持ちをぶつければいいのか。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:48 | category: タ行(その他) |
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