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関係したものがみな不幸になってしまう「こわい」
厚化粧がやめられないことを悩んでいるお雛が
夢の中で屏風のぞきに相談する「畳紙」
まだ五つだった一太郎が子供たちの間で噂になっている影女を追って
近所の子供たちと聞き込みに乗り出す「動く影」
心臓に病を抱えた吉原の禿を逃がすために策を高じるが
禿を気に入っている客が乱入してくる「ありんすこく」
強盗に奪われそうになった真珠と一緒に
鳴家も行方をくらましてしまう「おまけのこ」
装画・挿画:柴田ゆう デザイン:新潮社装丁室
しゃばけシリーズ第4弾はどれも良作でした。
全肯定されることを心から願う狐者異の寂しさ、
素顔をさらけ出すことを恐れるお雛の複雑な気持ち、
病弱な若だんなが知った友達の温かさ、
育ての親に恩を返したいと思うかえでの死への恐怖、
自分を役立たずでないと証明しようとする鳴家の冒険。
狐者異の話は悲しいけれど他は心温まる話です。
解説で谷原さんも書いているけれど
若だんなが人の気持ちの不思議を思う姿に共感できます。
何者かに殺されてしまう「茶巾たまご」
橋を越えてやってきた迷子は自分が帰ると殺されると言い
実際その家では妙な噂が立っている「花かんざし」
若だんなの「桃色の雲」がなくなったのと捕えられた猫又と
寺の松の木で見つかった死体の関係は?「ねこのばば」
旦那様が信じると金が手に入るという妙な信心に手を出し
これを怪しんだ佐助が全力で阻止しようとする「産土」
お春の結婚相手を調べようと外に出た若だんなが
当の献残屋と一緒に武士に捕まってしまう「たまやたまや」
装画:柴田ゆう 装丁:新潮社装丁室
「しゃばけ」シリーズ第3弾も短編集です。
最初に比べて若だんなも随分やんちゃできるようになりましたね。
それは微笑ましいのですが事件の背景はどんどん暗くなっていく。
自分の都合で人を殺すことを何とも思わない町人や
保身のために仏への思いを忘れた僧、
目先の金のために妖に命を差し出す商人など
悪い妖怪のせいではなく人の心の恐ろしさ
悲しい事件を引き起こしていきます。
一番怖くもありほっとしたのは「産土」です。
小間物屋の娘が死に仁吉が容疑者にあがる「ぬしさまへ」
栄吉の菓子を食べた直後に隠居が死んだ「栄吉の菓子」
奉公先のお嬢さんに好かれている気がする松之助の「空のビードロ」
誤って届いた布団からすすり泣きが聞こえる「四布の布団」
仁吉の恋するお吉さんは千年も鈴君を待ち続けている「仁吉の思い人」
妖怪たちが見えないことから誰かの夢の中にいると思う若だんなの「虹を見し事」
装画:柴田ゆう 装丁:新潮社装丁室
しゃばけシリーズ第2段は短編集です。
若だんなの兄の境遇が切ない「空のビードロ」と
弱みなどないように見える仁吉がかわいい「仁吉の思い人」がよかった。
もっと妖怪の活躍する場面があってもいいなあ。
身体の弱い一太郎はこっそり夜歩きに出た帰りに
人殺しと鉢合わせしてしまった。
無事に帰ってこられたはいいものの
幼い頃から側にいる妖の仁吉と佐助にこっぴどくしかられた。
そして捕まらなかった下手人は
一太郎の薬屋に特別な薬を求めて再び現れた。
どこかおかしな雰囲気をした下手人だったが、
彼が捕えられた後も似たような薬屋を襲う事件が続く。
彼らが求めているのは何なのか。
そして若だんなが夜な夜な家を抜け出す理由とは。
装画:柴田ゆう 装丁:新潮社装丁室
身体の弱い若だんなの成長物語、かな。
菓子作りが上達しないで悩む栄吉と
身体のせいで仕事をさせてもらえずに悩む一太郎の対比と
この2人ならではの友情が好きです。
あと妖たちがユニークでかわいいです。何より仁吉がかっこいい。
ドラマでは谷原章介が演じたそうですねーなるほど。
お家再興を願う士族に追われる小弥太を匿う「チヨコレイト甘し」
貧民窟の親分の1人に泥棒騒ぎの解決を頼まれる「シユウクリーム危うし」
多報新聞の投書の出所を探る「アイスクリン強し」
コレラの防疫活動に追われながら人探しをする「ゼリケーキ儚し」
謎の手紙の送り主とその狙いを考える「ワッフルス熱し」
時は明治、西洋菓子屋を営む真次郎と
元士族の巡査長瀬、成金小泉商会の1人娘沙羅たちが
変わっていく世の中をどう生きていくのか。
装丁:大久保伸子 装画:丹地陽子
主要人物たちはお金がないと言いつつも
余裕のある生き方をしていて安心して読めます。
もっとたくさんお菓子が出てくるのかと思いきや
巡査がらみの話がメインでタイトルのお菓子もちょっと無理やりかな。
小弥太がもっと出てきてもよかったと思うのですが
いつの間にかいなくなっていつの間にか病気になってたという印象・・・
もうちょっと細かいところを詰めて欲しかったです。
明治の和洋が混ざった雰囲気が好きな方は是非。
新宿の地下にある『酒場』で流行り出したのは
百円ショップで売っている『とっても不幸な幸運』の缶。
開けた人には不思議な光景が見え、それが変化のきっかけとなる。
学校で脱法ドラッグが流通する「のり子は缶を買う」
"不滅の恋人"の正体を探る「飯田はベートーベンを聴く」
思い出せない過去を探る「健也は友の名を知る」
『棺桶屋』を追いかける「花立は新宿を走る」
夢を見つけた頃を思い出す「天野はマジックを見せる」
末期がんの女の婚姻届を捜す「敬二郎は恋をする」
装画:寺門孝之 装丁:重原隆
特に第一章で視点が安定しないので話に入り込むのにかなり難航しました。
設定も少し特殊なので最初くらいはもっとわかりやすく書いて欲しい。
缶の名前も中身としっくりこないし…という感じです。
缶が出てこない最後の話が一番好き。