ほんのひとこと

元・本屋でバイトする学生による
日々の読書記録です。
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# 夏目家順路
評価:
朝倉 かすみ
文藝春秋

中学を出てブリキ職人となった清茂は妻と別れ子供も所帯を持ち、
近所の若者たちの草野球の監督をしていた頃を思い出しながら
隣に住む光一郎とスナックで飲んでいるときに倒れた。
息子の直は妻の利律子と共に初めての喪主をなんとか務め、
娘の素子は直の友人である作家田上との不倫中に連絡を受けて、
甥の娘である香奈恵はまったく付き合いはないが一応顔を出し、
スナックのママであるふゆみは店をくれた男のことを思い出し、
素子の夫の幸彦は主婦になってから冷たくなった妻について考え、
光一郎は自分の中に甦る清茂と会話し、
野球チームに入っていたトッチは当時の試合に思いを馳せ、
直の娘の詩織はおじいちゃんの死を「さつばつ」だと感じ、
別れた妻のかず子もひっそりと参列するのだった。
装丁:大久保明子 装画と扉絵:後藤美月

平凡な男の葬式に参加する身内や知り合いたちの群像劇。
それぞれいろいろ思うところがあって、
ただただ悲しむ人や遠い親戚だから一応来た人、
離れた家族に会うのが気まずい人、
初めて接する身近な死に対して受け止める人。
誰でも自分の人生についての本が一冊書けるはずだと言うけれど、
まさにそんな感じの小説です。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:14 | category: ア行(朝倉かすみ) |
# ともしびマーケット
赤ん坊を抱くようにネスカフェを抱く女性を気にする「いい日」
結婚せず両親と暮らしながらスーパーで働く「冬至」
サッカーの才能を見せる息子にも自分たち夫婦にも物語がある「平河」
佐藤ミガクにバレンタインを渡せず悶々とする「ピッタ・パット」
上京して離婚した父の元を訪れるはずが根無し草となる「232号線」
ブリキ職人だった老人は生きていくうちにどんどん羞ずかしいことが増えていく「流星」
同級生の通夜でキャッシュカードを作りたくなる「私」
買い物先で絵に描いたような三人組と出会う「その夜がきて」
ナースの彼女のヒモになった男は一目置かれるための近道を探す「土下座」
装丁:櫻井浩(Design) 装画:中島恵可

スーパーマーケットを中心とした連作短編集です。
いい日にはネスカフェを買うことにしている月足さん。
スーパーでたっぷりの時間を過ごす妊婦の敷波智子。
連帯保証人になって自己破産し離婚して生肉売り場で働く清野さん。
彼らの他にもいそうでいない人たちがたくさん出てきて
少しさびれた風情の町並みを立体的に読ませます。

「ピッタ・パット」の思春期全開乙女の妄想は読んでいてとても面白かったです。

佐藤「ちょっと待って」
あたし「(ふり向く)」
佐藤「きみ、だれ?」
あたし「(少し笑って)ドロップ!」
佐藤「って、だれ?」
あたし「(駆けてゆく)」
(中略)
そうして、かれは、気づくのです。背なかにいつもそそがれている一直線のまなざしに、かれはようやく気づくのです。
佐藤「・・・・・・加藤さんだったんですね」
あたし「(うなずく)」
――言葉はいらなかった。ふたりはわかりあってしまったのである。

全部がこんなノリだったら痛々しいですが
無気力そうな人が多い中で彼女の妄想はひと際輝いて見える。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:10 | category: ア行(朝倉かすみ) |
# 静かにしなさい、でないと
B(ブス)でW(わきが)、でもエリーである内海さんは
整形を思い立って東京に行ってみる「内海さんの経験」
お隣の子犬を捨ててすぐ拾ったことを見られてから
同級生の守彦からストーカー行為を受ける「どう考えても火夫」
綺麗な従妹にコンプレックスを抱きつつ
彼女のあと一歩の行動を煮え切らなく思う「静かにしなさい」
町会議員になってからまるでアイドルのように扱われ
これこそが本当の自分だと思う「いつぞや、中華飯店で」
出会ったときはお互い恋人がいたけれど
運命を感じてパラダイムシフトが行われる「素晴らしいわたしたち」
北の港町への転勤をきっかけに結婚して
ぽっくり家系の話を聞きながら新生活を送る「やっこさんがいっぱい」
新しいアパートでねずみとダニに苦しみ
清潔なベッドを求める「ちがいますか」
装丁:川村哲司(atmosphere Ltd.) 装画:升ノ内朝子

整形を考える女、幼なじみからストーカーされる女、
美しい従妹を羨む女、町会議員となり有頂天になる女、
パラダイムシフトを図る男女、夫について北国に住む女、
不潔なアパートに苦しむ女。
あまり恵まれない女性たちのどろどろとした心理描写が怖い短編集です。
「素晴らしいわたしたち」の盲目っぷりがすごい。
文体も全然違うし一番気になる作品でした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:23 | category: ア行(朝倉かすみ) |
# タイム屋文庫
評価:
朝倉 かすみ
マガジンハウス

小樽にある亡くなった祖母の家に引っ越してきた柊子は
高校生の頃好きだった吉成くんが夢として語った
タイムトラベルの本しか置いていない貸本屋を始めることにした。
これは深い関係にあった上司の妻が妊娠したからでも
義兄の浮気で姉が実家に戻ってきたからでもない。
吉成くんのことを考えたらもう止まらなくなったのだ。
どうせならお茶も出せるようにと考えて
資金集めも兼ねて近くのレストランでアルバイトをすることにした。
店長の樋渡徹にコーヒーの入れ方を教えてもらい、
彼の紹介で台所を新しく取り付け、
さらなる資金稼ぎのために新聞配達のアルバイトも始め、
着々と準備を進めているところでリスと名乗る少女が転がり込んでくる。
彼女をおばあちゃんのように感じて何も聞かずにいた柊子だったが
ある日こつぜんと姿を消してしまう。
そしてその後店を訪れた友達の木島や姉、樋渡はそろって
不思議な夢を見るのだった。
装丁:大久保伸子 オブジェ制作・写真:剱持耕平

おばあちゃんの家をコンセプトとする
タイムトラベルの本だけを扱った貸本屋で眠ると
自分の将来の夢を見ることができる、タイム屋文庫。
ここで柊子は高校の頃好きだった、
たぶん今でも好きでいる吉成くんを待ち続ける。

タイム屋文庫に行ってみたくなります。本やお茶の香りが想像できる。
柊子も含めたみんながそれぞれ希望の入り口を見つけられる
やわらかく明るい雰囲気がとても気に入りました。
結局リスは何者だったのだろう。

時間旅行の本って実際にどれくらい出ているものなのか。
本文中に出てきて私が知っているのは
『時をかける少女』、『ライオンハート』、『流星ワゴン』くらいでした。
あと思いつくのは北村薫の三部作と
『地下鉄に乗って』『カレンダーボーイ』『トキオ』くらいしか。
『パラドックス13』とかはまた違うのかな?
ネットで検索してみたらタイムトラベル小説を集めたブログを見つけた。
結構出ているものですね。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:01 | category: ア行(朝倉かすみ) |
# そんなはずない
結婚の挨拶に来た恋人が翌日から鳩子の前から姿を消した。
「八」は多いと思い落ち込んでいた矢先に会社も倒産してしまった。
しかし妹の塔子の思い人である午来と出会い気になる存在に。
さらに高校短大の同期から臨時の司書の仕事を紹介してもらった。
このまま順調にいくかと思いきやつい魔がさして七の男と再び会ってしまう。
総数に変わりはないのだと自分を納得させて。
また鳩子の周りを興信所の人間がかぎまわり出し
さらに四、五、六の男たちからもメールが届く。
これらはすべて塔子の仕業であり、
彼女は鳩子の跡をなぞって午来に思われようとしていた。
カバー写真:『futo』(マドラ出版より) テキスタイル:清川あさみ
写真:瀧本幹也 アートディレクション:森本千絵
ブックデザイン:鈴木成一デザイン室

失業して結婚までの男の数を気にする姉と
初恋の男を姉から取り戻そうとする妹の薄暗い話です。
この姉妹だけでなく20代から50代までの司書仲間たちも含めて
恋愛や結婚に対する女の人の心情が様々でリアルです。

「ひとが選んで持つものは、それぞれ、そのひとにとって入り用で、
 しかも、似合いのものなんだってことかな」
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:50 | category: ア行(朝倉かすみ) |
# 田村はまだか

スナック「チャオ!」で行われたクラス会の三次会では
6人の男女が田村を待ちわびていた。
一生懸命になれない営業の池内暁、
保健室のおばさんなのにある生徒が気になる加持千夏、
なんでもないブロガーの女の子に興味を持った坪田隼雄、
一年で退職、離婚、禁煙、開店を経験したマスターの花輪春彦、
永田一太との不倫がばれて離婚した伊吹祥子。
待てども待てども田村は来ない。
そして一行の元に連絡があった。
装丁:井筒事務所 装画:井筒啓之

田村を待つ間に待つ側のエピソードが語られていく話。
同じ経験を持っていないと面白くないような
内輪の話だけれども雰囲気が気になって読んでしまう。
中村理香のエピソードももっと欲しかった。
二瓶は田村の父親なのかも。

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:27 | category: ア行(朝倉かすみ) |
# 夫婦一年生
朔郎の北海道への転勤をきっかけに青葉と朔朗は結婚した。
初めての料理、初めての家計、初めての近所づきあい。
朔郎の両親が遊びに来たり、朔郎が風をひいたりと
普通に暮らしていても大変なことがたくさん。
さらには自宅で書道教室を開くことに。
そんな青葉の奮闘と幸せの物語。
フォーマット・デザイン:葛西薫
カバー・デザイン:谷畑典子(タイムマシン)
カバー・イラスト&4コマ漫画:坂崎千春

なんという事件もないのだけれど
当人からしてみれば目まぐるしい日々を
飽きさせずにふんわりと語っている。
最後に朔郎視点の短編を入れたのがよかったです。
のろけられました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:01 | category: ア行(朝倉かすみ) |
# ほかに誰がいる
あのひととわたしは一緒に「わたしたち」となって
綺麗な灰色になるまで混ざり合うの。
それなのに天鵞絨には空想だったはずの「かれ」ができ、
わたしに相談もなしにアメリカへの留学を決めてしまった。
これはいいきっかけだ、天鵞絨とのことを思い出にしてしまわなければ。

病んでいるといえばそれでおしまいなのだけれど。
なんで天鵞絨がよかったのかがわからない。自分と似てるから?
えりだって美少女なのにもったいない。
タマイくんが気になる。人の命はなんとあっけないことか。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:31 | category: ア行(朝倉かすみ) |
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