ほんのひとこと

元・本屋でバイトする学生による
日々の読書記録です。
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# 僕の明日を照らして
スナックを営むお母さんに女手一つで育てられていた僕だったけど
中二になってから歯科医の優ちゃんとお母さんが結婚して
僕は夜一人ぼっちではなくなった。
若くて優しくて格好いい優ちゃんは急にキレて僕を殴ったりもする。
そしてそのあと必ず落ち込んでお母さんに打ち明けようとしたり
家を出ていこうとする。しかもそれを僕のためだと言う。
冗談じゃない、僕がどうしたいかも知らないで
僕のためだなんてただの自己満足じゃないか。
それよりもっといい解決方法があるはずだ。
虐待について本で読んで勉強したり、日記をつけたり、
付き合い始めた関下に教えてもらって
カルシウムの豊富な献立を作ったりもした。
学校での僕は面倒なことを切り上げる役回りだけど、
優ちゃんとの関係は切ってしまえない。
装画:西川真衣子 装丁:池田進吾(67)

母親の再婚相手から虐待を受ける中二の隼太が主人公です。
隼太が変わっているのは、虐待から逃げようとせずに
義理の父親と一緒に改善策を考えるところ。
なぜなら虐待よりも一人ぼっちになってしまう方が怖いから。
「僕は絶対許さない。優ちゃん、逃げるなよ」なんて台詞は
もはやどっちが弱い立場なのかわからなくなります。
学校では冷めたキャラの思春期の少年が
義理の父親にこれほど固執するのは疑問を感じますが、
虐待を受ける子どもの捨てられたくないという心理が描かれていると思います。
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# 芙蓉千里
評価:
須賀 しのぶ
角川書店(角川グループパブリッシング)

辻芸人をしていたフミは自ら頼み込んで人売りについていき
哈爾濱の遊郭『酔芙蓉』の下働きとしてタエと共に働くこととなった。
お職を夢見るが容姿や発育があまりよくないフミは
タエをうらやましく思うが売られてきたタエは女郎になるのを嫌がっている。
フミはタエに得意の角兵衛獅子を教え込んで芸妓になるよう勧める。
しかしついにタエに月のものが来てしまい
お互いの夢を交換してタエはお職を、フミは芸妓を目指すと誓い合った。
それから5年、芸妓として名が売れてきたフミは
黒谷という貴族の美男子に水揚げされることが決まった。
しかし当日黒谷はフミを抱こうとはしない。
彼はフミの踊りの才能に目をかけたかっただけだと言うのだ。
おかげでフミは黒谷の援助に感謝しつつも
昔道端で出会った山村という男を恋い焦がれ続けるのだった。
装画:Sino 装丁:鈴木久美(角川書店装丁室)

最近遊郭を舞台とした小説が多い気がしますが
これが一味違うのは主人公が売られてきたのではなく
自ら望んで遊郭にやってきた芸妓だということ、
そして舞台が日本ではなくロシアの地、哈爾濱だということです。
どうせならばもっとどろどろとした女の世界を書いてほしかった気もしますが。
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# 駅神ふたたび
質屋チェーンの女社長が遺そうとしている遺言は
死んだ夫の弟ではなく甥とその犬に全財産を遺贈するというもので
教授の職を失う気がない甥は伯母の説得に臨む「犬の相続」
母とケンカして上京してきた高校生の妹を家に帰そうと
ケンカの原因を探るが頑として話さない「妹の恋人」
相性占いに行った近所の美人の奥さんは
人相見をされて腹が立ち占いの結果を信じない「浮気」
電車で寝ていると夢の中で坤婆の入り婿を賭けた
仙術試合に出ることになる「八卦仙 仙術大会」
政治家秘書として働いている父に持ちかけられたのは
ヨンバンセンの正体の調査だった「進退伺い」
貧乏大学生章平と易学学院のみなで占いを解き明かす。
装画:こさささこ 装丁:ハヤカワ・デザイン

幻の占い師ヨンバンセンの易の解読による悩み相談物語第二弾。
やっぱり話のまとまりがうまくないのと
易を活かせていないように思います。
人情ものに徹するなら「浮気」みたいな短編はいらないのでは。
| comments(0) | trackbacks(0) | 21:32 | category: サ行(その他) |
# 疾走
干拓地のある町に住むシュウジは秀才の兄のシュウイチの陰で
父と母と普通の暮らしを送っていた。
歯車が狂いだしたのはシュウイチが高校に入ったからか、
干拓地のリゾート開発計画が持ち上がったからか。
難易度の高い高校に合格したシュウイチはとたんに成績が振るわなくなり
家で横暴に振る舞ったかと思えば引きこもりになり犯罪を繰り返すようになる。
シュウイチが捕まってから大工の仕事が来なくなった父は失踪、
母は化粧品セールスを始めたが次第にギャンブルにのめり込み、
シュウジは犯罪者の弟として
リゾート開発を牛耳るヤクザとつながりのある徹夫を中心とした
いじめを受けるようになった。
シュウジが唯一息をつけるのは立ち退きに応じない教会の神父と
そこで出会った孤児の少女エリの前だけだった。
足を怪我したエリが東京に引っ越してしまってからは
神父とヤクザの女であるアカネが話し相手だった。
神父には殺人で死刑囚となった弟がおり、
彼の面会についていったシュウジはその目の暗さに吐き気をもよおす。
前々から高校には行かず家を出ることを考えていたが
シュウジは中学を卒業する前にもはや誰もいない家を出て東京を目指した。
最初に向かったのはアカネのいる大阪だったが
アカネの情夫であるヤクザの新田に捕まり暴行を受ける。
同じく捕まっていた少女みゆきとアカネの助けで大阪を出たシュウジは
東京で住み込みの新聞配達をしながらエリに連絡する。
Cover Art:Phil Hale
Cover Design:suzuki Seiichi Design Office

一般的な家庭が転落していく様を容赦なく描き出した作品。
二人称の物語って珍しいですね。私が読むのは『あるキング』以来かも。
いじめ、ギャンブル、アルコール、借金、犯罪、失踪、
暴力、暴行、殺人、窃盗、逃亡、起こりうる悪いことは全て起きているのではないか。
非常に重たい気持ちになりますが、
神父やエリたちシュウジを支える人々に一緒に支えられながら読了しました。
もっと走ることに意義を見つけられたらよかった。物語的にもシュウジにとっても。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:04 | category: サ行(その他) |
# 項羽と劉邦
六国を征服して中国大陸を支配した秦の始皇帝は
法治国家を築き人民を徴収して土木工事を進めた。
しかし始皇帝の死と陳勝・呉広の乱をはじめとした蜂起が相次ぎ
大陸は荒れ始めていた。
反乱軍の中で最大の勢力を誇っていたのが
楚の貴族だった項梁をリーダーとする反乱軍だった。
項梁が指揮を執り、甥の項羽が軍を率いるこの勢力には
各地の反乱軍が終結し、沛の町のごろつきだった劉邦もここに属した。
秦は二世皇帝を立てたが実質は宦官の趙高が全てを牛耳っていた。
反乱軍は陣を項羽と劉邦の2つに分けて秦の都のある関中を攻め、
早く陥落させた方を王にするという約束をした。
しかし項梁が殺され、秦軍の総帥の章邯を相手に手こずった項羽を尻目に
本軍ではなかった劉邦が先に関中をおさえた。
一時は関中の王となろうとした劉邦だったが
後からやってきた項羽の軍を恐れて関中を明け渡し、項羽が天下をとった。
劉邦は辺境の地に追いやられたが韓信の進言により関中を再び攻略、
項羽と真っ向から対立する道をとった。
圧倒的なカリスマ性を持つ項羽と
張良、蕭何、夏侯嬰など優秀な部下に恵まれた劉邦、
天下を取るのはどちらか。
装画・扉題字:下田義寛

項羽と劉邦、全く性格の異なる2人の将がどのように雌雄を決したのか。
カリスマリーダーとして周りをまとめる項羽と
駄目すぎてなんとかしてあげなくちゃという気持ちを起こさせる劉邦。
まさか劉邦がこんな顔だけのへたれだとは思いませんでした。
守ってあげたい将軍という点で『のぼうの城』を彷彿とさせます。
もちろん『項羽と劉邦』の方が全然先なんですけど、読んだ順番がね。
大事なのは食と器の大きさ(人間の)です!

「虞美人」「四面楚歌」などの由来となった場面も出てきて
こういうことだったのか、と思う。

しかしなんでamazonの画像は中巻しかないのかな。
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:30 | category: サ行(その他) |
# この胸に深々と突き刺さる矢を抜け
週刊誌の編集長を務める僕は
41歳で胃がんを発症してから人生観が変わった。
それどころか死んだはずの人間や未来の自分が見えるようになった。
共にがんと闘った友人が死んでしまったのも大きい。
今最大のスクープは政治家Nの金銭スキャンダルであったが
社長とつながりがあるらしく潰されそうで
ライターたちは息巻いている。
しかしそんなものは氷山の一角に過ぎず
Nがいなくなったところで政治がよくなることはない、
今の僕にとってはどうでもいいことだ。
妻との仲は悪くはないが生後3ヶ月で長男が死んでからは
夫婦の営みはまるでなく、上司の妻やタレント事務所から
連れられてくるグラビアアイドルで済ませている。
だいたい今の日本のシステムはおかしいのだ。
僕たちが優先すべきなのは結果の平等であり、
この世界の貧困を救うためにも経済的強者は自らの富を
分かち合わねばならないのだ。
装丁:川上成夫 装画:西村裕之

金と政治と余命と痛みとセックスとオカルトと。
それこそ週刊誌ゴシップの塊のような題材を
惜しげもなく盛り込んだような作品です。
主人公は金のあるものはないものへ分け与えるべきだとか
死を目前にしてしまった今はあまり何事にも関心がないとか
いろいろ言うことは言っていますけれど
それに全く行動が伴っていないのが人間くさい。
週刊誌の編集長なんてかなりの高収入だと思うけれど
それを寄付なんてしていないし
社内の人事でも自分の立場にかなり気を回しているし
他にも引用をふんだんに用いて
いたるところで主張している貧困の救済とは
食い違ったことばかりしていていらっとしてしまう。

しかしこれが直木賞ということは
エンターテインメント作品として世の中では受けとめられているのかー。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:32 | category: サ行(その他) |
# かたみ歌
引っ越してきたばかりのアパートの近所のラーメン屋で
強盗事件があったらしくその店の前で怪しげな男を見かけるが
一緒にいた彼女には見えていないという「紫陽花のころ」
「カラスヤノアサイケイスケアキミレス」という不吉な文章が貼られ
喘息持ちの私は恐々としていたが
強く賢い兄が不安をかき消してくれる「夏の落し文」
ザ・タイガースのサリーに似た青年に憧れる邦子は
古本屋で彼が手に取っていた本に手紙を挟み込み
そこからひそやかな文通が始まる「栞の恋」
豊子を暴力夫から匿っていた初恵は
夫が死んだ後も家に帰ってくるという豊子をおかしく思い
一人娘の満智子を預かる「おんなごころ」
マンガ家を目指してアパートにこもっていた私の元に
一匹の猫が飛び込んで来、さらに彼の姿が見えなくなった頃に
猫のように動く光の玉が転がり込む「ひかり猫」
溺死する直前の友達や交通事故に遭う前の老婦人に
命がなくなる前兆が見えてしまった俺は
恐ろしくなり引きこもり状態に陥る「朱鷺色の兆」
零細出版社で若くして自殺した女性の詩集を出すと
張り切っている旦那によれば、
彼女は夫の無理解の末に亡くなったのだという「枯葉の天使」
装画:松岡潤 装丁:新潮社装丁室

とある昭和の商店街を舞台にした連作短編集。
タイトル通り死に関する不思議なことがたくさん起こる町で
ある人は幽霊を見かけ、ある人は死の予言を受けます。
上手いのですが小さくまとまっている感じ。
ノスタルジーを感じたい方は是非どうぞ。
| comments(2) | trackbacks(1) | 11:57 | category: サ行(その他) |
# 駅神
評価:
図子 慧
早川書房

金町線に現れる幻の占い師ヨンバンセン。
彼に占ってもらうことのできた章平だったが結果がよくわからない。
するとヨンバンセンを探していた易学学院の紅川が
占いの勉強のためにその卦を見せて欲しいという。
章平がその学校に向かうと初老の竜崎、
女子プロレスのマッドタイガー大滝、現役易者の美男子玄斎がいた。
自分の相談内容を易で決め付けられることに最初は苛立ったが
新しい可能性が見えるかもしれないと諭される。
最終的に父の行方に希望がもてた章平は
幽霊に取り付かれた女子高生を紹介し、
占いを勉強しようと本を読みながら不思議な夢を見て、
夫を亡くした美人との相性占いの結果もみてもらう。
最後に巻末資料として易の見方がついています。
装画:こさささこ 装丁:ハヤカワ・デザイン

駅に現れる神出鬼没の占いおじいさんの卦を
易学学院の4人が解析して悩みを解決していきます。
易に対して知識がある人ってほとんどいないと思いますが
巻末資料もあるし噛み砕いて解説してくれます。
モチーフとして易を使うのは面白いけれど活かしきれてなかったかなあ。
幻の占い師のはずなのに結構みんな会えてるし。
現代を舞台にするよりは「八卦仙」みたいな
ファンタジックな世界の方が楽しめました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:01 | category: サ行(その他) |
# 志賀直哉
12歳の清兵衛は仕舞屋で見つけた瓢箪が離せなくなり
ついに教員に取り上げられる「清兵衛と瓢箪」
秤屋に来た客から何故か鮨をご馳走される「小僧の神様」
野暮な侍が夜逃げの口実に美しい腰元に艶書を送るが
その気持ちに応える返書が来てしまう「赤西蠣太」
口喧しい夫と気の利かない妻が来世ではおしどりに生まれようと
約束するが妻は間違えて狐になってしまう「転生」
奇術師がナイフ芸中に妻を殺したのは故意か過失か「范の犯罪」
女中の妊娠をめぐる妻と夫の思惑「好人物の夫婦」
姉の夫の親類として出会った肥った年増の薫さんに恋をする「冬の往来」
電車に跳ねられた養生中に記した随筆「城の崎にて」
火を囲みながら雪山での母親の勘について聞く「焚火」
汽車の中で子連れの女の人に会う「網走まで」
新しい自転車を買うのに口約束を破ったことを後悔する「自転車」
元一つ石だった軽石を偶然拾い、モラエスの夢を見た直後に
モラエス研究家が訪ねて来、失踪猫のクマを偶然見つけた「盲亀浮木」
芥川君との少ない交流を語る「沓掛にて」
老成してうまくなると文に精神のリズムがなくなると説く「リズム」
装丁:安野光雅

「小僧の神様」や「クローディアスの日記」のように
最後に作者が出てきて後は書かない、というのが斬新でした。
広げた風呂敷を畳みきれていないよりは潔いのかもしれない。
でも読者としては続きが読みたいんだよなぁ。その読後感を狙っているのか?
「転生」や「荒絹」みたいな童話のような話が好き。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:18 | category: サ行(その他) |
# あした咲く蕾
命を分ける魔法が使えるおばがいた「あした咲く蕾」
母の再婚に悩む弘美が雨の日だけテレパシーを聞く「雨つぶ通信」
偶然入った店で元気の出る料理を食べる「カンカン軒怪異譚」
娘が生まれる前に逝ってしまった夫に語る「空のひと」
父は失踪、母は病み荒んだ私を少女が救った「虹とのら犬」
やさしく病弱なおばちゃまと会わないように母に言われる「湯呑の月」
幼なじみの『フカシマン』を見舞いに行く「花、散ったあと」
装丁:野中深雪 装画:中島梨絵

過去に起こった不思議なことの回想録のような短編集です。
昔語りが多いので話にのめり込む感じではなくさらっと読める。
「あした咲く蕾」のラストと「湯呑の月」には少しぞっとします。
「空のひと」は電車の中で泣きそうになってしまった。
「カンカン軒怪異譚」のおばちゃんの豪快さに
ご飯を食べなくても元気をもらえるような気がしました。
| comments(2) | trackbacks(1) | 02:02 | category: サ行(その他) |
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