ほんのひとこと

元・本屋でバイトする学生による
日々の読書記録です。
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# 正弦曲線
評価:
堀江 敏幸
中央公論新社

なにをやっても一定の振幅で収まる窮屈さに可能性を見出す
「優雅な袋小路」
山と田畑が直行する日本、緩斜面で構成される英国
「絶対無比の曲線を見つめて」
「人間は、善くないから」と話すイルカの声が正弦曲線だった
「沈没船とイルカ」
パジャマのポケットに何を入れるべきなのか考える
「昼のパジャマ」
孤島と無人島は似たイメージだが実際の定義は異なる
「曖昧な海に浮かぶふたつの島」
グライダーはふたつの風速の差を活用して上昇エネルギーに変換する
「風の接線」
落とすことを前提として測量士のおじさんに手帳を紹介してもらう
「野帳友の会」
聞くとは相手の言葉を受け止め、自分でも驚くような表現が出る可能性をもつ
「ぼんやりとは聞けない」
古書店で見つけた木の図鑑のあいだにたくさんの押し葉が入っていた
「押し葉が本のあいだから」
装丁:間村俊一

タイトルの正弦曲線に通じてイルカの音波とか
センターフライの描く放物線とかオブラートの楕円とか
曲線をモチーフにした小品集です。
ふとしたエピソードや外国のお店で出会った小物から
ぽーんと飛んだ発想がたくさんつまっています。面白い。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:15 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# おぱらばん
フランスの下宿で会う中国人たちの「おぱらばん」
ルーマニア女性に部屋を紹介する「BLEU,BLUES,BLEUET」
内科の待合室でジャン・ジオノの記事を読む「ドクトゥール・ウルサン」
ラルボーの影響で河馬の絵葉書を探す「留守番電話の詩人」
カルスカヤの個展を見た後の偶然「洋梨を盗んだ少女」
作家志望のDが自分の作品を老人に見せた「貯水池のステンドグラス」
乱暴な主人の床屋を気に入る「床屋嫌いのパンセ」
子供の頃廃墟となった喫茶店に忍び込む「ボトルシップを燃やす」
祖父と『ビセートルの環』を重ねあわせる「音の環」
ひょんなことからベンチのある部屋を訪ねる「黄色い部屋の謎」
通訳ついでにタクシーで映像を取りに行くこととなった「クウェートの夕暮れ」
非フランス人作家という立場で部屋探しに苦労する「手数料なしで貸します」
定期券を巡るいざこざで移民たちと意気投合する「M」
聾唖の大男の店に通う「珈琲と馬鈴薯」
「やまのかいしゃ」に憧れながら詩人を思い出す「のぼりとのスナフキン」
デザイン:新潮社装丁室

フランスの町並みと雑貨と文学が折り重なったエッセイ集。
なにこのタイトル、と思うもちゃんと由来が書かれている。かわいらしい。
パリでは使用済みの誰が書いたのかもわからない絵葉書が
雑貨屋で売られているらしく不思議でしょうがない。
日本でもそういう商売ってあるのかな。
フランス語が流暢に書かれた異国の絵葉書って
日本人からすればものすごくお洒落だけど母語話者としてはどうなんだろう。
あとは「床屋嫌いのパンセ」の豪快なおじさんとか
「黄色い部屋の謎」の内装とかに惹かれました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:55 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# 一階でも二階でもない夜
かつては当たり前だった「なつやかた」も今では贅沢なこと。
眼の中の水は自分が呑み込んだもうひとつの世界。
東京に雪が降ると翌月の文芸誌にも雪が降る?
画商との関係とを絶ち貧しかった画家クートラスの残したカルト。
アメリカ映画をフランス語吹き替えで見るとバットマンは禿げた鼠。
パリの店に行くなら名前に公共施設が入っているところがいい。
自分の仕事は「企画書が書けませんでしたという始末書」である。
東京では「町へ行く」という表現が使えない。
みんながじぶんのやり方と同じようにしていると思ってくれるな。
フランス語では針金クリップをトロンボーンと呼ぶ。
新宿の雑貨屋で始めてレモン石鹸が売られているところに遭遇した。
安全性の面から電車内での化粧はやめた方がよい。
カバー:北園克衛「プラスティック・ポエム」より
装丁:堀江敏幸+中央公論新社デザイン室

やっぱり文学部分(主に局堯砲話里蕕覆は辰个り。
むしろ全部読んでる人っているのだろうかと思ってしまいます。
それでもやはりものに対する扱いの丁寧さが好きです。
空き地を「水底に沈んだ青白い聖域にうごめく半魚人たちの姿が
さまざまな光を浴びて自在さと混沌の魅力を夜空に伝える神秘の空隙」
と表現する人はきっとこの人しかいない。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:46 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# アイロンと朝の詩人

待機のためだけにフィールドから隔離されたネクストバッターズサークル。
聞くたびに暗い気持ちになる横断歩道のとおりゃんせ。
ヨーロッパで暮らして以来どうしても好きになれない家庭の蛍光灯。
新しく買った携帯電話に多くの男からかかってくるドーラ宛ての電話。
卵と卵のセット、そしてスポーツマンの猫。
子どもの頃に見つけた秘密基地の岩棚。
スラックスの上を行ったり来たりする彼女。
不揃いな鉛筆削りのかすを出すために手に入れた宗近肥後ナイフ。
カバー:北園克衛「プラスティック・ポエム」より
装丁:堀江敏幸+中央公論新社デザイン室

静かなエッセイ集です。
文学作品について言及されているところは
勉強不足のため読み下せていないですが
少し古い小物についての語り口が凄く好きです。
鉛筆用のナイフとか郵便用のスタンプとかタイプライターとか。
スポーツマンの猫について知りたいです。
でもこの話フィクションぽいからなぁ…

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:04 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# もののはずみ
古物市で見つけた2匹の犬のぬいぐるみ、
誰かの手帳、お玉の形の秤、へそのあるビー玉、
繰り出し式のシャープペンシル、手巻きの目覚まし時計、
あたためれば動く腕時計、120個のゴム印セット、etc
近い過去の生活用品のもつ「物心」ひかれて集めてきた
著者の持ち物コレクションとエピソード集。
写真:著者 装丁:高柳雅人(角川書店装丁室)
企画・製作:三品信(東京新聞)、
      松崎夕里、津々見潤子(角川書店)

こういうちょっと昔の小物ってひかれますよね。
しかもフランスの古物市の掘り出しものだなんて素敵すぎる。
お玉秤とキーホルダーが一押しです。
「時間」がありきたりのものを美しくするとあるけれど
今の日本の製品で将来より美しくなるものはどれくらいあるものか。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:55 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# 未見坂
未見坂の住宅にバス停を作る話があるそうだ。
高齢者だらけの住宅なので足が出来ることはありがたいが
坂の途中のバス停に車椅子で乗り降りすることは不可能だ。
しかもそのバス会社は近くの商事と因縁の関係にある。
バスとその周辺をめぐる全9編。
装画:清宮質文 装丁:新潮社装丁室

さびれかけた町並みとそこに暮らす人々。
「戸の池一丁目」の移動スーパーに惹かれる。
雪国とその周辺がちらっと出てくるのを読んで嬉しくなってしまった。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:53 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# 河岸忘日抄
老人が公園で倒れているところを助けたところ
彼の所有する繋留された船で暮らすことになった。
彼を外界と繋ぐのは日本にいる枕木さんからのファックスと
時折やってくる郵便配達員と少女。
配達員から以前ここに女性が住んでいたと聞いて
大家にそのことを尋ねるが彼は逆に小さな女の子の存在を聞き返す。
謎が解けないままコーヒーや音楽に囲まれて暮らしているうちに
大家の病気が芳しくなくなってきた。
装画:山本加奈子 装丁:新潮社装丁室

読みにくかった…まさに散文と言うかピースがいろいろ混ざっている。
読み直すと新しい発見がありそうだけれども
今はそれだけの気力がありません。

「なぜかって、目の不自由なひとたちは、自分の土地の大きさを、目に見える人々よりもずっと性格に、身体で覚えているからさ、つまり、それがほんとうに視力なんだよ。」

「人と人とが織りなしていく文様は無数の片側からできており、奇跡的にぴたりとあう場合がある一方で、その他の大多数は背中合わせのまま消えていくのだ、自分はこれまで、いくつの片側を周囲の人間に晒し、いくつの片側を受け止めてきたのだろう。」
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:35 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# 回送電車
人間が太古から馬と良好な関係を結び得たのは
ひとえにお尻のおかげである。「猫のいる風景」
サンタクロースとはあくまでひとつの職業なのであって
転職ではなく、たまに自問している。「サンタクロースの背中」
開封のためのシンプルなナイフ。「オピネルの5番」
幼少から夢見たへらつきのボトルのり。「コッコイーナ603」
偽造小切手をばらまく東欧人。「モリー・トシフスキー」
カバー:中央公論新社デザイン室

「それぞれに定められた役割のあいだを縫って、
なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せる」回送電車のような散文。
言葉のセンスがすごくいい。あとタイトルのつけ方も好き。
残念ながら兇能个討る作品は全然知らなかったのですが
犬粒姐颪離▲鵐謄ークになってしまったような小物の話に憧れる。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:22 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# めぐらし屋
亡くなった父の部屋を整理するために蕗子さんが
ひょうたん池のくびれにあるアパートにいると
「めぐらし屋」宛てに電話がかかってきた。
亡くなる前の父のことを知らなかった蕗子さんは
「めぐらし屋」を紹介したという磯村さんを訪ねることに。
装丁:有山達也

近所の子どもが溺れているのを助けた父。
未完の百科事典を売り歩いていた父。
隠れ家の斡旋を引き受けていた父。
家族でも知らないところはたくさんあるに違いない。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:08 | category: ハ行(堀江敏幸) |
# いつか王子駅で
翻訳や講師で身を立てる私は居酒屋で知り合った正吉さんが
店にカステラを忘れて行ったことに気づいた。
今度会ったときに返そうと思うがずっと留守にしているらしく
居酒屋にも来ないし家にもいない。
それを気にかけながらも大家の娘の咲ちゃんの
家庭教師をしたり筧書房に立ち寄ったりする毎日だ。
立体:三谷龍二 写真:広瀬達郎(新潮社写真部)

職人さんがたくさん出てきます。
印章彫り師、パラフィンがけ、町工場の技師。
ひとつのことを専門にする人は考えがしっかりしている。
他にも競馬の話だったりいろいろな人の作品が引用されていたり
(残念ながら全然わからなかった、島村利正、岡本綺堂など)
盛りだくさんだと思います。正吉さんは結局どこに行ったのか。

キーワード:馬、のりしろ、待つこと
「変わらないでいたことが結果としてえらく前向きだったと後からわかってくるような暮らしを送る」
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:46 | category: ハ行(堀江敏幸) |
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