ほんのひとこと

元・本屋でバイトする学生による
日々の読書記録です。
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# ケッヘル(下)
柳井がドナウ川で自殺し、彼の知り合いであった栗田も
ツアー先のプラハで橋の欄干から吊るされて殺された。
一緒にツアーに来ていた鬼頭とは別れ、
伽椰は榊原とマンハイムへ行くこととなった。
栗田が遺した手紙から連続殺人事件の原因となった事件を知り、
気を引き締めていたにも関わらず榊原も心筋梗塞で死亡。
若手ピアニスト安藤アンナと恋に落ちるが
彼女を疑い始めた伽椰はこれ以上彼女の手を汚さないために
最後の標的、辰巳を先に殺そうと考え始める。

父を亡くしてみなしごとなった鍵人は
最後に暮らした黒島の近くの無人島で美津子と出会う。
5歳で男にいたずらされた彼女の中には5人の人格があり、
男を怖がる彼女と鍵人はプラトニックな愛を育む。
彼女から宮崎の高千穂にある高校に誘われて共に入学し、
学園のマドンナとなった美津子に言い寄る男はたくさんいて
鍵人は気が気でない。
そしてついに夜神楽の日、恐れていたことが起こった。
写真:及川哲也 装丁:大久保明子

モーツァルトを聞きながら読むと美しさが倍増すると思います。
ここに神性を見出してしまうのもうなずける。
しかし後世にケッヘルがつけた番号に神性はないと思う。
あとケッヘルのナンバーだけでどの曲かわかるほどの
モーツァルティアンって実在するのか気になります。

並行していたストーリーがつながり殺人事件の真相が明らかになります。
鍵人は壮絶な半生を送っているのによく好人物に育ったものだ。
あれほどまでに美津子に固執していた辰巳が
千秋に執着していた理由がよくわからないのですが、
メンツの問題なのか面影を重ねていたのか。
| comments(4) | trackbacks(0) | 14:05 | category: ナ行(その他) |
# ケッヘル(上)
逃亡生活を続けていた伽椰はドーバー海峡近くの町で出会った遠松に
鎌倉にある家の住込みのキャットシッターを頼まれ
3年ぶりに日本に帰ることにした。
伽椰が逃げていたのは政治家の辰巳直道、
そして彼から奪った妻の千秋からだった。
夫だった篤之の紹介で千秋に出会った伽椰は一目で惹かれ
千秋と駆け落ちをするが、次第に心中を考える千秋が恐ろしくなり
海外へ逃げ出したのだった。
遠松の紹介で伽椰はモーツァルティアンばかりを顧客とする
アマデウス旅行会社の添乗員の仕事に就き、
ウィーンの追悼ミサに行く柳井に付き添うことになる。

ママと桂子さんの2人に育てられた鍵人は
学校にもあまり行かず英才ピアノ教育をほどこされて育った。
しかし合唱団でオーケストラを指揮する実の父・鳥海武と出会ってしまい、
演奏会で彼の姿を見たママはショックで死んでしまった。
遠松グループのおじに引き取られた鍵人だったが
鳥海武に誘拐され、モーツァルトにゆかりのある番号の電車になって
全国を転々とする生活が始まった。
写真:及川哲也 装丁:大久保明子

モーツァルトづくしの情念ミステリ?です。
やっぱりこの冷たいのに熱く、どろっとしているのに美しい
文章にやられてしまう。

「このひとは体のまわりじゅうに水を湛えているかのようにしんとして凛々しく透きとおって見えるが、ほんとうは火のようにさみしいひとなんだ。マッチを擦ればたちまち骨まで燃え尽くしてしまいそうなほどの火種が体の奥に隠されていて、それを持て余しながら、おそれながら、ふるえながら、どうにかこうにかこの世界の片隅に居場所を見つけ、息をしているんだ。」
まさしくそのとおり。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:45 | category: ナ行(その他) |
# いちにち8ミリの。
中学3年生のわたしはある日庭の「ゴリづらの木」の上に
男の子がいることに気づいた。姿は見えないけれど声はする。
最初はゴリづらの顔を見てやろうと必死だったけれど、
そのうち学校での悩みや気になる加藤くんについて相談するようになった。
どうもわたしは小さい頃ゴリづらと約束をしたようだけれど
まったく思い出せないでいる。
「ゴリづらの木」
年末に閉演が決まったワールドパークで12年園長を務める俺の前に
林勘助の子孫の復讐を目論む忍者の荒巻が現れた。
本当に子孫でないか見張るのだとつきまとう荒巻に辟易するが
本物の忍者がいると何故か評判になりワールドパークの入園者が急増。
しかし親元から家系図が届いて俺が標的でないことがわかると
荒巻は姿を消し、ついに閉園の日が訪れる。
「手裏剣ゴーラウンド」
美澄を愛する俺は彼女を狙う石や神主の相手をするのに忙しい。
突然動き出した不思議な石の目的は
なんと美澄の家を見守れる丘の上に移動すること。
一日8ミリしか動けない彼の努力の積み重ねも
怪しい神主・太田源信の念力ショーのために毎年戻されてしまう。
源信のたくらみを看破しようと
俺は野生時代に一緒にいたカラスのクロコと画策する。
「いちにち8ミリの。」
装丁・装画:大路浩美

故中島らもさんの娘さんだそうです。
童話のような少し不思議な短編集です。
今の社会からはみ出した人(動物、石も含む)の存在によって
当たり前だと思っていたことが別の角度から見えてくる。
「手裏剣ゴーラウンド」が一番わかりやすくて面白いかなあ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:22 | category: ナ行(その他) |
# 魔女と金魚
術使いの繭子はデザイナーのイッペ・オオサコにスカウトされているところを
彼女の妻であるマドカに浮気現場だと勘違いされてしまう。
誤解はすぐに解けたもののイッペの浮気相手を突き止めてほしいと
マドカに依頼された繭子は困ってしまう。
だってイッペの浮気相手は繭子の親友で花屋を営むユメノだったから。
その上タロットによればユメノはイッペの子どもを妊娠している。
人の恋愛についてもやきもきするが自分の恋愛も悩みの種だ。
別れたばかりの要にお互い未練があるもののなかなかうまくいかない。
しかも要はどうやら花町の地下に彼女がいるらしい。
他にも花町にはよくない噂が多く
いい気分になれて副作用も一切ない砂糖といった怪しげなものが
最近出回っているようだ。
さらに繭子の元には嫌味な術使いのシュートや
砂糖売りの北西の魔女たちが現れて繭子を不幸にしていく。
装丁:三瓶可南子(Design)
カバー・本文イラスト:オカヤイヅミ

可愛い表紙に惹かれて。
占いで相手のことはわかるけれど自分のことはわからない
術使いの繭子が成長していく物語。
自分本位だった繭子がシュートたちを見てやっと
自分がどれだけ周りに甘えていたのかを知ることが出来ます。
魔法の世界がカラフルで可愛い。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:37 | category: ナ行(その他) |
# 弱法師
評価:
中山 可穂
文藝春秋

現時点では不治の病に犯されて鷹之のもとへやってきたのは
8歳の繊細な少年朔也と美しい母親である映子だった。
朔也も映子も愛してしまった鷹之は離婚して病院をやめ、
小さな診療所を開いてつきっきりで朔也を診ることにした。
しかしアルコールに頼るようになっていた映子は事故で死に
専属の栄養士として珠代さんを雇うが朔也はどうも気に入らないらしく・・・
「弱法師」
新人賞をとった後なかなか次回作が書けない高丘は
墓場で元敏腕編集者だったという女ホームレスと出会う。
彼女が担当していたのは永遠の青春小説の書き手と呼ばれる深町遼。
他の出版社と契約していたはずの遼は彼女に陶酔し
彼女のためだけに100本の小説を書き、それが終わったら
自分のものになってほしいと乞う。
婚約解消した彼女の自殺、遊びだったホステスとの無理心中などを乗り越え
ついに約束まであと1本を残すところとなった。
「卒塔婆小町」
外国を飛び回ってめったに帰ってこない薫子おばさんが帰ってきた。
病弱な母と和菓子屋を継いだ父も好きだけれども
わたしには薫子ちゃんにしか言えないことがたくさんあった。
しかし17歳という年のせいもあり素直に薫子ちゃんと接することができないうちに
弱っていた母がついに死んでしまった。
病院に着いたわたしと父は遺体がなくなってしまったことを知らされる。
「浮舟」
装丁:大久保明子 扉絵:久保田珠美
能面:寺井一祐作「弱法師」 協力:京都「田中彌」

中篇が3作収録されているのですが、どれも凄い。
難病の美しい少年の鬱屈した考えと怪しげな魅力、
そして彼を愛し彼の母を愛する医者を描いた「弱法師」。
編集者に恋をした青年作家が彼女のためだけに小説を書き続け
恋心には応えられないがその作品を愛するが故に彼を拒めない
作家と編集者の業が浮き彫りとなった「卒塔婆小町」
綺麗で気風のよい薫子おばさんと
線の細い母、母を愛する父の悲しい三角関係を綴る「浮舟」

どの作品も鬼気迫る勢いがあって、
「卒塔婆小町」の主人公は男性だけれども
中山さんもこれくらいの気概で書いているのだろうと想像できます。
情熱よりももっとしぶとい何かがどっと押し寄せてきて
自分の貧弱な考えなんてあっという間にさらわれてしまった。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:05 | category: ナ行(その他) |
# 掏摸
評価:
中村 文則
河出書房新社

スリで生計を立てている僕はスーパーで
母親に万引きを強要されている少年をつい助けてしまい
彼につきまとわれるようになってしまった。
さらに悪いことにその弱みにつけこまれて
木崎の仕事を手伝わされることになる。
木崎とは以前スリ仲間の石川、立花と共に
強盗の片棒を担がされ、石川はその後消された。
人の生死を思いのままにすることに喜びを感じる木崎だから
今度も失敗すれば容赦なく僕のことも消すだろう。
装丁:鈴木成一デザイン室 装画:のりたけ

腕の立つスリが大きな犯罪の片棒を担がされる話。
誰にも感情移入できず世の中にはこういう面もあるのか、
という感じで終わってしまった。
主人公が少年に渡した箱は何なのか、
佐江子にそこまで執着するのはどうしてか、
木崎の起こそうとしていることはどれほど大掛かりなのか。
全然明かされないので不完全燃焼です。
この話はこの視点でいいとして、続編か何かで木崎のビジョンが知りたい。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:12 | category: ナ行(その他) |
# さびしい女神
僕僕たちが道中で出会った蚕嬢はなんと峰麓の王女だった。
12年間神の巫女として仕えなければならなかった水晶は
あまりの退屈さに禁を破った結果蚕の姿に変えられ
国は日照りが続いて人々は困窮するようになってしまう。
王弁はなんとかしたいと思うが僕僕は我関せずでどこかに行ってしまい
薄妃は村の女と共に機織りをするも完全回復には遠く
劉欣は山に住むおおばばに伝説を聞くが解決策にはならない。
ひとり宿にいた王弁は神の怒りを納める生贄として闇に置き去りにされ
旱の女神である魃と出会いその不遇を知る。
なんとか魃も峰麓の人々も助ける道はないかと
王弁は吉良に乗って古い神である燭陰と耕父のもとを訪ね
魃が封じられた神々の戦争の全貌を見る。
装画・挿画:三木謙次 装丁:新潮社装丁室

僕僕シリーズ第4弾は王弁の成長物語です。
いつでも情に訴えることがよしとされるわけではないけれど
今回は甘さを貫き通したが故の王弁の頑なさが見られてよかったです。
魃は醜いという設定らしいですが三木さんのイラストだと
みんなとても素朴で可愛らしく思えてしまう。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:34 | category: ナ行(その他) |
# どうで死ぬ身の一踊り
藤澤翅い坊硬櫃垢觧笋枠爐諒荵欧蠅頬れた寺で
以前あった墓標が今は寺のどこかに放られていると知り
無理を承知で頼み込み家に持ち帰る
「墓前生活」
三十も半ばとなった私は中華レストランで働く女と同棲するようになり
彼女のパートの給料を生活費に当て
彼女の両親に借りた金で藤澤翅い料棺犬鮑遒蟷呂瓩
「どうで死ぬ身の一踊り」
一度実家に戻った女を泣き落として元の鞘に納まった私は
最初のうちこそ暴力も振るわず仲良くしていたが
ついには再び蹴り出してしまう
「一夜」
カバー装画:杉本一文 カバーデザイン:水戸部功

作家・藤澤翅い亮筆原稿から墓標から収集に情熱を傾けつつ、
同棲する女に金を頼り、暴力を振るっては下手に出ることを繰り返す男の話。
何がすごいってこれ私小説なんだそうです。
絵に描いたような駄目男である自分をこうも客観的に書けるのは凄い。
凄いけれどもわかっているなら直せばいいのにと思ってしまう。
しかも結構最近の話だとか。昭和の香りがするのになあ。

| comments(0) | trackbacks(0) | 22:04 | category: ナ行(その他) |
# 胡蝶の失くし物
僕僕の抹殺を命じられた暗殺者の劉欣は
唯一の弱みである両親の命を救う薬を僕僕から渡され
胡蝶の組織を取るか両親を取るかの選択を迫られる「職業兇徒」
相思水の女神から気を吹き込まれた薄妃は
賈震の元へ飛ぼうとするがいつもある寺のところで意識を失う「相思双流」
薬種屋のやり手主人周典が
夢の中では使用人の趙呂にこき使われる「主従顚倒」
大歓迎を受けた先で王弁は仙骨欲しさに
怪しげな結界に入り蚕を前にする「天蚕教主」
食事で自らの身体を保てるようになった薄妃が
ついに賈震の元に帰る「回来走去」
広州にたどり着いた一行だったが
胡蝶を抜けた劉欣の元に弟弟子が使わされる「恩讐必報」
装画:三木謙次 装丁:新潮社装丁室

三作目から面白くなると聞いていたのですが
確かに今までよりも話の展開が面白い。
相変わらずの仙人の僕僕と弟子の王弁の道中記ですが
劉欣の登場は中だるみだったストーリーに
緊迫感をもたらしたおかげかと思います。

どうも気になるのが言葉遣い。
「まじすか・・・・・・」とか「そゆこと」とか
現代っぽすぎるのにひっかかります。細かいのかしら。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:22 | category: ナ行(その他) |
# マラケシュ心中
人気歌人の緒川絢彦は自らの恋愛感情を糧に作品を詠む。
ある日歌会にやってきた小川泉にひと目で惹かれてしまうが
彼女は恩師である小川薫風先生の後妻だった。
周りからも釘を刺され絢彦自身も自制しようとするも
彼女のことを狂おしく思う気持ちを止められない。
思いを告白しつつ友人関係を続けたかったが
やはり友情では満足できずいっそのこと二度と会わないことを宣言し
雑誌の企画のためにイタリアへと飛びたった。
しかし旅行先で元人気歌手とのスキャンダルをでっちあげられ
かっとなった絢彦は帰国後出版社へ殴りこみに向かい
そのままスペインへと逃亡を企てる。
日本での生活を捨てたことをすがすがしく、
また薄ら寒く感じながら乗り継ぎのためモスクワ空港にいると
なんと泉が追いかけてきた。
ひと目見るだけだと言っていた泉だったが
絢彦は強引にスペインへと連れて行ってしまう。
装丁:大久保伸子

やっぱり中山さんの作品は感情の重さが違う。
道ならぬ恋の逃避行と聞くとよくある話のようですが
レズビアンが不倫でモロッコまで行くのはそうそうないのでは。

泉がなかなか薫風先生を思い切れないのがじれったくてしょうがないです。
ひどいこともされているし愛はないように思うのですが
老い先短いからという情や世間体なのかな。
でも世間体を気にしていたら絢彦を追いかけて
モスクワまで飛んできたりはしないだろう。そこが煮え切らない。
それに対して絢彦の思いは本当にまっすぐで振れ幅も大きくて
読んでいる方も振り回されそうになるくらい。

薫風先生や柏木といった泉の周辺の男性の描写が
もう少し欲しかったかなあ。
そうすれば絢彦が戦わなければならない男という性が
もっと浮き彫りになったと思う。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:24 | category: ナ行(その他) |
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