ほんのひとこと

元・本屋でバイトする学生による
日々の読書記録です。
<< September 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
# スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | | category: - |
# 首無の如き祟るもの
媛首村の駐在だった夫の記録と斧高少年の証言を合わせて
媛之森妙元は未解決事件を小説に記し始めた。
最初の事件は媛首村地主の本家筋である一守家の長女妃女子の
十三夜参りの儀式中の死、
次の事件は一守家の花嫁候補だった古里毬子、
そして一守家の長男である長寿郎の死、
最後の事件は二守家の二男である絋弐の詩だった。
しかもいずれの死体も首がなくなっていた。
まるで媛首村に古くから伝わる淡首様の祟りのように。
斧高が十三夜参り中に目撃したものは何だったのか。
そして長寿郎の首だけ戻されたのは何故だったのか。
妙元は読者に推理を呼びかける。
装丁:スタジオ・ギブ(川島進) 装画:村田修

淡首様の祟りが真剣に恐れられている村で
地主の跡継ぎたちが次々と首無し死体で見つかっていく。
祟りの伝承、連続殺人事件、跡継ぎ争いなど
人間の醜い部分がこれでもかというくらい登場し、
それらが全て必然として収まっている見事な作品です。
ミステリで説明できるところはきちんと提示する一方で
ホラーの余韻も残しているのが秀逸。
ミステリホラーの中にはトリックを説明せずに
人智を超えたもののせいにして投げてしまっていて
しっくりこないまま終わってしまうものもあるからなー。
| comments(0) | trackbacks(0) | 21:06 | category: マ行(その他) |
# ぜつぼう
評価:
本谷 有希子
講談社

ブームが去って引きこもりかつ不眠症になった元芸人の戸越は
公園で出会った中年男に伝書鳩の受取人になってほしいと頼まれ
男の実家で暮らすこととなった。
しかしたどり着いた家には何故か先客がいた。
シズミと名乗るその女はこの家の住人の娘ということになっているようで、
戸越は彼女と別居していた旦那ということになった。
そしてシズミは戸越のファンだと言う。
つい嬉しく思ってしまう戸越だったが
そんなことでは彼のぜつぼうは消えない。
それでも村人たちと農作業を行っているうちに
シズミの旦那としての生活を演じきってやろうという気になるのだが。
カバーイラスト:黒田硫黄 ブックデザイン:祖父江慎+コズフィッシュ

ヒッチハイク番組で一躍人気になった芸人というと某コンビを思い出しますが
本作の戸越は返り咲きもせず、社会復帰もせず、
ただただひきこもっています。
ぜつぼうでいることが彼のアイデンティティでさえあります。
そのアイデンティティを守るために
彼は最初は喜ぶそぶりを見せないように心掛け、
次にいくら周囲に楽しんでいるように見えても
こんなことで和らぐようなぜつぼうではないのだと自分に言い聞かせ、
ぜつぼうしながら村になじんでいく様子は奇妙に面白い。
この後彼はさらなるぜつぼうを感じるのだろうか。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:56 | category: マ行(その他) |
# 厭魅の如き憑くもの
怪奇幻想作家の刀城言耶が調査に訪れたのは
そこかしこに笠と蓑をつけたカカシ様が祀られた神々櫛村だった。
憑き物筋の谺呀治家には必ず女の双子が生まれてさぎりと名付けられ
巫女としての修業を行っている。
その日も叉霧刀自が孫娘の紗霧を憑座に
千代の祓いの儀式を行っていたところ
憑依された紗霧はさぎりの生霊だと告げて意識を失う。
さらに黒と呼ばれる谺呀治家の紗霧と白と呼ばれる神櫛家の漣三郎を
結びつけることによって黒と白の融合を図ろうとする
村の合理的な人々がカカシ様のような姿で次々と殺されてゆく。
また刀城の興味は神隠しにあった漣三郎の兄や
死んで山神様となったと言われる紗霧の姉にも向かう。
果たしてカカシ様の呪いは存在するのか。
装丁:スタジオ・ギブ(川島進) 装画:村田修

叙述ミステリホラーです。
山神様とも厭魅ともつかぬような格好で次々と死んでいく村人たち。
山神様の仕業に見せかけようとした殺人か、それとも本当に呪いなのか。
山神信仰の中で育った村人たちはもちろんよそ者である刀城でさえ
その密室状況に超人的なものを感じてしまう。

現実的に説明のつくミステリのように収束させるのかと思えば
説明されないホラーの余地も残された良作。
挙がっては却下される犯人像にいちいち納得してしまい、
最終的には見事に伏線を回収しているので
自分の読みの浅さを痛感させられます。

しつこいほどに繰り返される蛇の隠喩に良くも悪くもうんざり。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:43 | category: マ行(その他) |
# 鳩とクラウジウスの原理
評価:
松尾 佑一
角川書店(角川グループパブリッシング)

社長と僕の二人で営む広告会社の経営が苦しくなり
僕はしばらく他の仕事を探すことにした。
生命保険のコピーを考えながら公園で鳩にエサをやっていると
アフロの老人柳田さんから伝書鳩管制官にスカウトされる。
会社を辞めてアパートに転がり込んできた
大学時代の友人の軍服を着た大男ロンメルと
何故か僕らに興味を持った一つ年下の犬さんを養うためにも
僕は大阪鳩航空管制部でボンテージの間宮さんの雑用係として働き始める。
しかし最近「あまねくこの世の恋愛に復讐すること」を目的に
ラブレター輸送用鳩を捕まえて
ラブレターを奪い取ったり書き換えてしまう
いたずらグループが出没しているという。
彼らは犯行声明で自分たちをクラウジウス団と名乗っていた。
奇しくも僕が大学生の時にロンメルたちと結成した会、
クラウジウス原理主義者の会と名前が酷似しているのだ。
装画:しいら 装丁:鈴木久美(角川書店装丁室)

クラウジウスの原理によれば、
エネルギーは必ず高いほうから低いほうへと流れていくものである。
これを恋愛に当てはめれば、人は易きに流れるということである。

伝書鳩管制官とあまねく恋愛に復讐することを行動原理とする
クラウジウス団のラブレター伝書鳩を巡る攻防戦!
モテない大学生時代を引きずった馬鹿馬鹿しさと
主人公磯野の諦観や理屈っぽさ、変な引用が
森見登美彦さんと伊坂幸太郎さんを思い出させます。
そこにのだめ(犬さん)をヒロインに持って来た感じ。

磯野の高校時代の想い人である夜羽子の断章が気になります。
選評で池上永一さんも触れているけれど
こちらの核があるのかなあ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:28 | category: マ行(その他) |
# 雨の塔
評価:
宮木 あや子
集英社

この世の果てのような岬の女子大は
完全寮制でお金持ちの子女しか入ることが出来ない。
ここにやってきたボーイッシュな矢咲は
デザイナーのファンヨーの娘である小津と同室となる。
そして喫煙所で出会った陶器の人形のような三島に
高校時代に心中事件を起こしたさくらの面影を見る。
一方自らを三島の奴隷だと言うハーフの都岡は
外の情報をきっかけに小津と親しくするようになる。
矢咲に惹かれる三島は親切心からさくらが死んだことを矢咲に伝えるが
それをきっかけに矢咲は部屋にこもるようになり
小津との距離が近づいてしまう。
装画:鳩山郁子 装丁:柳川貴代+Fragment

自分の進む道を自分で決められることが許されない
裕福で孤独な少女たちの純愛小説です。
萩尾望都さんの描く世界の女性版という感じ。
誰にも共感はできないので表紙の籠の中の少女のイメージが
とてもよくあっていると思います。
美しいけれど外には出れずに鑑賞されている。
みんな厭世観を持っているけれど
強いて言えば三島が一番感情的で入りやすいかも。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:45 | category: マ行(その他) |
# 骸骨ビルの庭
46歳、家電メーカーを早期退職し第二の人生に向けて
物件の立ち退き交渉を手がけるアオヤマ・エンヴァイロメントに
転職した私が最初に与えられた仕事は
骸骨ビルと呼ばれる昭和16年に出来た建物の立ち退き交渉だった。
ビルの持ち主だった阿部轍正と茂木泰造はここで
戦争孤児を育てていて、今でも茂木と養子となった6人が住んでいた。
着任早々家族の名前が調べ上げられた脅迫文が送られてくるが
大検受験を決意した息子の手前帰るに帰れず
積極的な交渉に出ないまま住民と親交を深めていく。
彼らが望んでいるのは阿部から性的暴行を受けたと主張する
桐田夏美の贖罪であった。
療養のために骸骨ビルに移り住み孤児たちを育てた茂木泰造、
骸骨ビルのお姉さん的存在で居間は小料理屋を営む湊比呂子、
脳に障害のあった弟への思いからダッチワイフを作る市田峰太郎、
SM雑誌の発行をしている熊田英人、
彩子ママの教育のおかげで教養を得たナナちゃんこと小田勇策、
一番最初に骸骨ビルに迷い込んだトシ坊、
なかなか盗み癖が抜けなかった菊田幸一、
一番最後に骸骨ビルにやって来た女らしい趣味を持つ佐倉峰夫。
ドジで自分の本名もわからないチャッピー。
腕っ節が強く今では暴力団の一員であるヨネスケ。
彼らの話を聞きながら昔農業をやっていた庭で
自分も農業を始めてみる。
装丁:大久保伸子 装画:TAKORASU「植木街」

戦後まもなく、青年2人に育てられた戦災孤児たちの話を
彼らをビルから追い出さねばならないヤギショウが聞き
当時の彼らの様子と今はもう亡くなった阿部轍正の人物像が浮かぶ。

ただでさえ物資が少なく自分の食べるものにも困る状況で
なぜ阿部轍正は孤児たちを育てようとしたのか。
今でも骸骨ビルに関わる者たちからは
阿部や茂木の優しさ、畑仕事で学んだ忍耐力などが語られますが
チャッピーの話だけは違い、必ずしも好意的な目だけで見てないことがわかります。
最初は恩知らずな、と思ってしまいましたが
「どんな美談にも翳がある、っちゅうことをわかってほしいんです。」という言葉に
目を覚まされたような気がしました。
チャッピーの話を全面的に信じる気にはなれないけれど
いい話を求めていれば全てがいい話に、
逆に悪い話を求めればみな悪い話に聞こえることを
小説の中で提示されたのは少し新鮮でした。

みなと食堂のおいしいご飯が食べたくなります。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:25 | category: マ行(その他) |
# 忌館
出版社で編集の仕事をする傍ら
『迷宮草子』という名の同人誌から小説を依頼された私は
気になっていた洋館に移り住み
そこをモチーフとした怪奇小説の連載を開始した。
ハーフ・ティンバー様式のその家はイギリスから移築されたものであり、
イギリスで3件、日本で1件の殺人事件の舞台でもあった。
無意識の内に筆が進み始まった連載小説は
洋館に引っ越してきた家族の弟が
その家に興味を持つ青年津口十六人を不気味に思いながら展開していく。
現実世界では私は連載のファンであるという信濃目綾子と親交を深めていく。
連載小説と現実の事件が奇妙にリンクし、
絡まりあった物語が行き着く先は。
カバー装画:村田修 カバーデザイン:坂野公一(welle design)

謂れのある洋館に住む作家が
自分でも書いた記憶のない小説を発表し、
その小説の中身が作家が知らなかった実在の事件と酷似している。
さらに彼自身にも不気味な影が忍び寄る。

本格ミステリ大賞を受賞されたということで
デビュー作を読んでみました。
好みというわけではないのですがとても気になる作品。
現実世界との合わさり方が巧みでざらざらした感触がする。
作中の三津田信三も著者と同じ仕事を手がけていて
現実との境界が曖昧なのもこの不穏な雰囲気に拍車をかけています。
本当の現実と、物語の中の現実と、作中作が溶け合っている。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:03 | category: マ行(その他) |
# 好き好き大好き超愛してる。
寄生虫ASMAと戦う彼女への愛、
「死なないでくれ」と言えなかったことを後悔し
彼女の弟たちのように感情を爆発させられないまま
小説を書き続け、彼女からの手紙を受け取る愛、
夢の中で見かけた顔も名前もわからない女の子への愛、
ろっ骨融合でつながり戦場へ送り出すイヴへの愛。
「好き好き大好き超愛してる。」
母親の浮気相手に頭をドライバーで刺された俺は
頭の中で頭に穴の空いた世界を救う少年・村木誠となり
ユニコーンのあかなと頭でのセックスを繰り返すが
松本先輩に頭に手をつっこまれてからあかなでなくてもいいと分かり
最後の敵となったあかなを殺さなくてはならない
「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」
Book Design: Hiroto Kumagai, Noriyuki Kamatsu
Cover Design: Veia (Akira Saito)
Cover Illustration: Otaro Maijo
Font Direction: Shinichi Konno (Toppan Printing)

舞城さんはちょっと敬遠していたのですが
「好き好き大好き超愛してる。」はよかった。

「僕は本当に起こったことは書かない。僕が書くのは起こりえたはずなのに起こらなかったことかそもそも起こりえなかったからやはり起こらなかったことだけだ。そういうことを書きながら、実際に起こったことや自分の言いたいことをどこかで部分的にでも表現できたらと思っている……というより願ってる。」

手の届かなくなってしまった彼女への愛が
さまざまな角度で綴られています。

「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」はいまひとつ。
こういうテイストが苦手なんだろうなあ。
佐々木妙子やニオモくらいの不思議さなら大丈夫なのだけれど。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:29 | category: マ行(その他) |
# 扉守
伯母の営む小さな飲み屋で
代々守っているという不思議な井戸を見せられる
「帰去来の井戸」
場所が語る物語を芝居にする劇団「天音」の今度の公演は
解体作業中に怪現象が起こるお屋敷を舞台とする
「天の音、地の声」
クラスメイトや母に対して逆らえずにいた雪乃が
突然気の強い物言いが出来るようになる
「扉守」
美しい絵の中に男の人を見た早紀は
その絵の中に入り込んでしまう
「桜絵師」
独身の祥江は家庭の愚痴を言う晃代をうとましく思い
思いつめているところを美青年から写真に撮られる
「写想家」
編み物作家のバッグから飛び出した靴下を追いかけて
町内を案内する羽目になる
「旅の編み人」
幻のピアニストと呼ばれる零と専属調律師の柊に
ずっと家で鳴らないピアノを直してもらう
「ピアニシモより小さな祈り」
装画:丹地陽子 装丁:大久保明子

大地を流れる力が強い潮ノ道と
そこにある持福寺の住職、了斎の元を訪れる様々な人々による
不思議な連作短編集です。
遠い地で死んでも最後にこの地へ帰ってこられる力、
場所の持つ記憶を読み取る力、
他の世界への扉を開く力、
無念の死を遂げたものを慰める絵を描く力、
人の持つオーラを写し取る力、
毛糸に限らず全てのものを編んでしまう力、
ピアノに語りかけ、最高の音を奏でる力。

実在のアーティストさんからインスピレーションを得ているところも
大きいようなのであとがきから新しい世界が広がるかもしれません。
あと舞台が尾道なので出身者はまた違った読み方ができそう。
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:55 | category: マ行(その他) |
# 化身
評価:
宮ノ川 顕
角川書店(角川グループパブリッシング)

誰にも行き先を告げずにバカンスに来た南の島で
くぼ地のような池に落ちてしまい助けは来ないまま
身体は環境に合わせて変化していく「化身」
学校で嘘つきの汚名を晴らすために
雷魚を釣るために雷神山の溜池に通う康夫は
そこで見知らぬ女の人と会うことを楽しみにする「雷魚」
娘の希望で飼いはじめたオカメインコのハッピーは
深夜にしわがれた声で予言めいた言葉を放ち
その通りにすると受験も株も成功する「幸せという名のインコ」
装丁:鈴木久美(角川書店装丁室) 装画:亀井徹「想念」

第16会日本ホラー小説大賞受賞作「化身」を含む3編。
やっぱり受賞作が一番今までにない感じ。
ホラーかと言われればちょっと疑問もあるけれど
生命を感じさせる作品だと思います。
「雷魚」と「幸せという名のインコ」はあまり目新しさもなく
ちょっとぞっとするね、くらいの。
「雷魚」のお姉さんはうつ病の人なのかと思っていた。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:37 | category: マ行(その他) |
Categories
Profile
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Search this site
Sponsored Links